『冬ソナ』俳優らが出演する韓国映画『福岡』 なぜ大名の古本屋が舞台?
ゆったりとした口調でにこやかに話すチャン監督。タイトル“福岡”の意図は? 「福岡は、漢字そのものが『幸せな丘』。人間は誰でも幸せな丘に登りたい、登ってみたいという気持ちになるはず。そんな気持ちを込めたタイトルにしました」 “幸せな丘”=福岡。いい響きだ。 撮影は約10日間に渡って、大名のほか、福岡の中心部・天神などで行われた。 「福岡のど真ん中の都会で撮影しました。なぜなら、この周辺でお酒をずっと飲んでいたから(笑)。友人と酒を飲んで、おいしいものを食べて、偶然見つけたおいしそうな店に入って食べながら話をするのが大好きで」
老舗の古本屋で撮影
平日の昼下がり。撮影場所となった入江書店はノスタルジックな外観が目を引く古本屋だ。店の周りではカメラやマイクなど、大きな機材を抱えたスタッフら約20人が奮闘していた。
この日は3人が通りを歩くシーンを撮影。冬ソナのキム次長をはじめ、韓国ドラマファンにはお馴染みの役者が出演していることもあり、撮影に気付いた通行人が集まるなど、注目を集めながらの撮影となったが、快く握手に応じる姿も見られ、演者もリラックスしている様子だった。
「僕は本が好きなので、たくさんの本がある空間の中で生活することはとても幸せなことだと思います。子どもの頃から職業を一つ選ばなきゃいけないとしたら、小さな本屋さんを開きたいと思っていました。この世の中で一番幸せな人は、本屋さんではないかな」とチャン監督は、楽しそうに語る。 「最近はインターネットが発達しすぎて本を読まない時代になっていますよね。それは、とても残念ですが、また本を読む時代は戻ってくるのではという思いもあります。本が持つ懐かしさや香りなどを感じるそんな時代が再び訪れると、そう思っています。そんな思いが大名を選んだ大きな理由の一つでもあります」
今年9月のアジアフォーカス・福岡国際映画祭での上映をめざす
現在編集作業を行っており、今年9月に開かれるアジアフォーカス・福岡国際映画祭での上映をめざす。 「カメラは正直なので、人はもちろん、街のいろいろな面を引き出してくれる。福岡の良さを引き出した美しい映画に仕上がればいいな。そして、多くの観客に見てもらって、福岡でまたおいしいお酒がたくさん飲めればいいなと思います」 お酒がおいしい街。福岡の雰囲気がそうさせるのか? 「お酒はもちろん、水炊きやラーメンもおいしく、韓国や中国に行くと必ず福岡の良さを宣伝しています。僕はたぶん福岡の食べ物大使、広報大使のような役割を担っているんじゃないかな。福岡の観光大使、ぜひ引き受けます。その時は映画監督の仕事を辞めてもいいよ」 穏やかな笑顔で、時折茶目っ気なコメントで周囲を和ませようとするチャン監督。撮影中は険しい顔を見せていたが、カットがかかると福岡の気さくな魔法にかかるようだ。 (取材・文・写真:秋吉真由美)