驚愕の「お尻がウネウネ動く戦闘機」なぜ? 「型破りゆえ飛び方ヤバイ!」そのぶっ飛んだ実力とは
「お尻を動かす」メリットって?
ロシアの戦闘機MiG-29には、胴体最後部のエンジンの排気口が“動く”ユニークな実験機がありました。それが「MiG-29OVT」です。どのような理由でこのような型破りな設計がなされたのでしょうか。 【動画】これが「尻がウネウネ動く型破り戦闘機」の型破りすぎる全貌&フライトです 戦闘機が運動性を上げるには、主翼や尾翼の操縦用舵面に加えて、ジェットエンジンの排気を曲げて活用する「推力偏向」という方法があることは早くから知られていました。 例えば米国では、F-15を改造した実験機で研究を重ねたことにより、現在のF-22は2基あるエンジンの後ろに2次元ノズルと呼ばれる上下に動く板を付けています。左右のエンジンの後ろに付けたこれらの板でエンジンの排気を上下に曲げて、機首の上げ下げや横への回転率を上げるという仕組みです。 米国はこのほかにもドイツと合同で、3枚のパドルをエンジン排気口のさらに後ろに付けてX-31と命名した機体で実験を行いました。これはパドルの動きを組み合わせることにより、1基のエンジンで機首の上げ下げや横転も行えるのが利点です。 これに対して、MiG-29OVTは、「排気口のノズルそのものを動かす」というユニークな手法で推力偏向の実現を図ったのです。
「お尻がウネウネ動く戦闘機」その実力は?
MiG-29OVTは一見、ほかのMig-29と変わりはありませんが、地上で止まっている時は排気口がだらりと下がるのが特徴です。その排気口は、円周に沿って3か所に設けた駆動装置で上下と左右に約15度までぐりぐりと動き、機体の向きをあらゆる方向に変えることができました。 3次元ノズルと呼ばれるこの排気口は、インターネットを通じ、「こんな手法もあったのか」と当時の航空ファンなどを驚かせました。というのも、それまではF-22の2次元式ノズルか、いかにも後付けに見えるパドル式が、推力偏向式として一般的と思われたからです。 MiG-29OVTの運動性は非常に良く、海外の航空ショーでの展示飛行では、バク転や“起立”に近い姿勢で前進するなど、派手な飛びっぷりで観客を驚かせました。 米空軍のF-22も、海外のデモ飛行では上昇中に非常に小回りの利く横への回転を見せていますが、MiG-29OVTはF-22よりさらに動きが“変則的”で、まさに異次元の飛びようでした。 ロシアはこの3次元ノズルをスホーイ30MKのほかに、ステルス戦闘機のスホーイ57にも装備しているといわれます。ロシアが推力偏向式の排気口を好むのは、ステルス戦闘機が出た現代においても、戦闘機同士の空中戦は、格闘戦によって撃ち落す機会もあると想定しており、そうした場面で勝利するためには運動性の良さが必要と見ているということでしょう。 それゆえに、ロシアやほかの国でも、推力偏向式ノズルはこれからも戦闘機に付けられる可能性はあるといえます。
島田駿(航空・旅行ライター)