日本で一番「説明責任」を求め続ける朝日新聞から「回答期限4分前」に届いた「捏造疑惑記事への説明」の中身
質問事項への具体的回答無き返答
すると5月10日16時56分、設定した回答期限の4分前に以下のような返答があった。 この回答をSNSで公開したところ、多くの人々から朝日新聞に対する批判が起こった。 朝日新聞への質問書に対し、16:56分。〆切の4分前にPDFで返答が来ました。 取り急ぎコメントや感想は後、以下に内容をそのまま転載します。 https://t.co/RSwMW4Ny7N ― HAYASHI Tomohiro (@SonohennoKuma) May 10, 2024 批判コメントの主な内容は以下の5つに集約される。 ---------- 1・記事の訂正を周知するアナウンスが極度に不足しているとの指摘 2・提出された質問書について、個別の質問に対する具体的な回答を避けたことへの疑問と批判 3・記事の根幹となるはずの当事者の発言も含む多数の箇所が突如改竄された。それらに対する合理的な理由の説明がなかったことで、当事者の存在や発言も含め、記事の多くが捏造ではないかと疑う声 4・誤報の原因究明や再発防止策などの説明責任が全く果たされておらず、吉田証言・吉田調書問題事件の教訓が全く見られないこと 5・紅麴にかかわる捏造報道で関係者を処分した読売新聞との違いと、その理由に対する説明がないこと ---------- 著者は上記の問題点を伝えた上で、改めて朝日新聞に以下の内容で再質問書を送り、内容をSNS(X)でも公開した。 〈 1.すでに送った質問書に対し、「まとめて回答」ではなく個別の質問それぞれに対する回答を重ねてお願いします。また前回、個別の回答を避けた理由とこの対応に責任をもつ担当者名と肩書とを明確にお答えください 2.なぜ前回の回答では、その対応に責任をもつ担当者の名前を出さずに回答したのでしょうか。何か理由があるならば、具体的にお答えください 3.なぜ記事の写真を女性の顔写真からそうではないものに差し替え、事実誤認があった箇所以外の部分の複数個所の文言を何ら説明無く改ざんしたのか。その理由を具体的にお答え下さい 4.関連して、新しい記事では、当初の記事から69文字が追加され、72文字が削除されていました。以下、変更箇所の一部について具体的にお伺いします。 <変更前> 受賞をきっかけに取材や講演依頼が相次いだ。高専の5年になったある日、先生に呼ばれた。除染土の再利用を進める大熊町の催しに参加してほしいとの依頼だった。 「大熊町の出身として、町の人が再利用に合意するようにがんばってほしい」。除染土の再利用は福島県内でも疑問の声が上がっていた。 <変更後> 受賞をきっかけに取材や講演依頼が相次いだ。高専の5年になったある日、先生に呼ばれた。除染土の再利用を進める大熊町の催しに参加してほしいとの依頼だった。 除染土の再利用は福島県内でも疑問の声が上がっていた。「大熊町の出身」として、再利用への合意が広がるように言われた。 <変更前> 「結局、地元が合意するという結論があって、それに自分たちが利用されていた。気持ち悪かった」 <変更後> 「結局、地元が合意するという結論があって、それに自分たちが利用されているようで気持ち悪かった」 この改変について、括弧書き内の発言は自然な読み方をすれば当然その言葉を誰が言ったのかは特定可能ですが、この発言者本人に、記事を変更する許可をいつ、どのような手段で取ったのか具体的にお答えください 5.記事の事実誤認を認めた後も、いまなおこの記事に対してこの変更の経緯等に対して多くの疑念が提示されています。そして、この背景の調査・検証と周知が足りないとの声が多数あります。今後、社内で調査・検証をし、その内容を公表する予定はありますか。しないならば、その理由を具体的にお答え下さい 6.改変の結果、当該記事は客観的な論拠に乏しい1人の女性の「主観」に過ぎない状況がより強く疑われるようになりました。なぜ、客観的な論拠と多くの住民の悲願、客観的なエビデンスを差し置き、「止まらない涙」「被災者として注目されることを避けたいと願う」女性の主観を敢えて強調し矢面に立たせたのでしょうか。 大月福島総局長がしたことは、単に、極めて基礎的な事実確認を怠り、報道が守るべき最低限の公平性・公益性を無視したということにとどまらず、若年者・被災当事者のトラウマをさらに深める加害行為にあたる人権侵害ではないでしょうか。本件がもつ報道倫理上の問題について、御社のコンプライアンスとの整合性の中でいかに捉えているのかご説明ください 7.関連して、既に先の質問書でも触れた点ですが、地元多数派の声を伝えず「地元合意の不確かさ」ばかりを訴えることで合意や理解を妨害して問題を解決困難にさせ、その解決困難を以てさらに記事を書こうとする。それをもって購読者からの収益等を得ている。このマッチポンプ型の報道が利益相反にあたるのではないかとの批判も改めて出てきています。この批判を認めますか。これが正当でないと考える場合、具体的な論拠と共に反論をお願いします 8.記事で女性は『「子どもたちのため」「社会のため」にと、大人が子どもの語りを誘導することもある、と指摘する。それは、報道機関にも当てはまる』と語ったとされていますが、今回の朝日新聞報道こそがその際たるものではないかとの批判もあります。この批判を認めますか。この批判が正当でないと考える場合、具体的な論拠と共に反論をお願いします 9.読売新聞で記者が処分された対応との違いを指摘する声も相次いでいます。読売新聞と違い、担当者への処分は行わないのでしょうか。イエスかノーか、さらにその理由もお答えください。 10.今回の記事を「捏造」と指摘する声が数多くあります。捏造であったか、イエスかノーかでの明言をお願いします 以上10点へのご回答をお願いいたします。 〉 朝日新聞社広報部 ご担当者様 先日は質問への回答をありがとうございました。先にお伝えしていた通り、お送りした質問書と合わせて一般公開したところ、非常に大きな反響を呼んでいます。そのほとんどが朝日新聞社様への批判であり、代表的な傾向をまとめると、主に以下の5点に集約されます。… ― HAYASHI Tomohiro (@SonohennoKuma) May 18, 2024 この再質問書は大きな注目を集め、PVは当日夜のうちに朝日新聞発行部数350万を大きく超える442万以上となり、回答期限の22日までには500万PVを超えた。それだけ多くの人が朝日新聞の対応に疑問を持ち、質問書を拡散共有し、事態を注視したということだ。 すると、今度は回答期限となる5月22日17時の1分前、16時59分にメールが届いた。 内容は以下の通りである。 ---------- ・1度目の質問書に続き今回も文責と担当者名を明らかにするよう求めたにもかかわらず、匿名のまま。 ・質問への具体的な返答の一切を避ける。 ・捏造を疑われる根拠を具体的に突きつけられているにもかかわらず、何ら有効な反論が出来ていない ・「」で括った当事者の発言が改竄されたことに当事者の許可や裏付けを取ったかの質問に一切答えず、「分かりやすくするため」などとして済まそうとしている ・マッチポンプ・クレイムによる利益相反の疑いについて何の弁明もない ・これらを覆すための根拠を何一つ示さずに「捏造ではない」の一点張り ---------- わざわざ回答期限の1分前まで待たせて送ってきたこの対応が、他者に対しては日本一「説明責任」を求め続けてきた新聞社が自ら果たした「説明責任」であった。 著者は本件を、これで有耶無耶のまま終わりにはさせない。今後は本記事を以て、朝日新聞社が掲げるガバナンスにある「メディアと倫理委員会」「パブリックエディター制度」などに引き続き訴えていく所存である。
林 智裕(フリーランスライター)