知らない男から突然電話、「放課後デイサービスはもうかる」 塾が経営難で、誘いに乗って開業したら…
長野県南信地方の法人、わずか4カ月で運営休止
南信地方の法人が今年、障害のある子を放課後預かる放課後等デイサービス事業所を2カ所開業したが、ずさんな運営計画により4カ月で運営を休止していた。法人代表は塾経営がうまくいかず、ある人物に勧められて開業。だが利用する子どもが集まらず、元職員の賃金の一部が未払いになっている。法人代表によると、この放課後デイは県の指定が取り消される見通しだ。 【写真】Xの支援で開業した放課後等デイサービス
開業を持ちかけた男、発達障害児の増加見据え他の事業者も勧誘
この法人は今年、南信地方で定員各10人の放課後デイを2カ所開業。開業を持ちかけたのは、県内を中心に放課後デイの新規開業手続きを「支援」し、手数料を得ている県内在住の60代男性だった。この男性は、発達障害と診断される子の増加を踏まえ、人づてに知った人に放課後デイの開業を勧誘する人物で、他にも施設運営に行き詰まった事業者がある。
責任者不在のずなんな計画 県、指定取り消しへ
法令によると、放課後デイには、利用者のサービス計画を作る児童発達支援管理責任者(児発管)を1人配置する必要がある。さらに、定員10人に対して児童指導員か保育士を2人以上配置しなければならない。だが、この放課後デイの複数の元職員によると、両施設には開業以降、児発管が不在のまま。2施設のうち一方の開業に際し、もう一つの施設に勤務する保育士の名前を書類に記載して県に開業の申請をしたという。
元職員7人に賃金計220万円未払い
法人代表の50代男性は取材に、「申請(手続き)上は問題なく、早期に開業できるのならいいと判断した」と話した。だが、2施設合わせて利用者は4人だけ。代表は「現場職員による周知の不足が原因」と説明した。 一方、元職員によると、賃金が未払いの元職員は少なくとも7人。未払い額は合計で約220万円になるという。代表は職員への賃金の未払いを認め、「支払いたいが収入が全くない状況」とした。 この法人の事例について、県障がい者支援課は「コメントできない」として説明しない。管轄する労働基準監督署は「個別事案には回答できない」とした。
営利目的の安易な参入、地域に混乱
この法人の代表に取材すると、放課後デイの開業を持ちかけたのは、信濃毎日新聞が今年1~6月に連載した「ふつうって何ですか?―発達障害と社会」で取り上げた「パサー」(=パスを出す人)を名乗る「X」と同一人物だった。営利目的で安易に障害児福祉に参入した事業者が、地域に混乱をもたらしている。 法人代表の本業は塾経営。昨年10月、面識のないXから放課後デイの開業を勧める電話があり、「もうかる」と持ちかけられたという。塾の生徒が減り経営難にあった代表は「渡りに船」と誘いに乗った。