中国が優勢、南シナ海でのエネルギー争奪戦-米国には不愉快な実態
(ブルームバーグ): ベトナムは今年、国内最大級の天然ガス田発見から利益を得るはずだった。
推定1500億立方メートルの天然ガス田は首都ハノイ規模の都市に数十年間電力を供給するのに十分な量であり、2011年にベトナム中央部の海岸から80キロ離れた場所で発見された。
計画通りに進んでいれば、米エクソンモービル主導の「ブルーホエール(シロナガスクジラ)」プロジェクトは昨年後半の稼働開始だった。
南シナ海の反対側では、フィリピンがガス・石油輸入への依存を減らす方法として、西海岸沖に埋蔵されている豊富なエネルギーに長い間着目してきた。
だが、中国の漁船と海警局の公船、そして「モンスター」と呼ばれる大型船から成る船団が、いつまでたってもそうならないことを確実にしている。
中国は南シナ海全域にわたり広大な領有権を主張。いわゆる「九段線」を描いた1947年の曖昧な地図がその根拠だが、オランダのハーグにある常設仲裁裁判所は2016年、中国の主張を退けた。
中国の習近平国家主席はこの判断を無視。緊張が高まっている係争海域での状況は、米国や東南アジア各国にとって不愉快な事実を付き付けている。この対立では中国が優勢だ。中国は23年8月、台湾東部に新たな線を加えた「十段線」の地図を発表した。
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「中国は事実上、U字型のライン内での新たな石油開発に対する拒否権を確立した」と「南シナ海:アジアの覇権をめぐる闘争史」を執筆したビル・ヘイトン氏は話す。
フィリピンとベトナムは昨年、液化天然ガス(LNG)を初めて輸入した。ブルームバーグNEF(BNEF)の予測に基づく算出では、フィリピンは25年9月までのLNG購入に14億ドル(約2170億円)近くを費やす予定で、ベトナムは同じ期間に3億7000万ドルを支払うことになっている。
経済成長のために燃料を輸入することを長い間計画してきた両国だが、国内でのエネルギー源の開発が遅れているため、エネルギー供給が危機にひんしている。