岡田将生の”膝枕”に衝撃…『虎に翼』、緊張の続く場面で最も和んだシーンは? 徹底解説
桂場に膝枕される航一という画が微笑ましい
尊属殺の最高裁への上告を待つ美位子(石橋菜津美)に、よね(土居志央梨)は心を寄せる。父親からの暴行を、「おぞましいがありふれた悲劇だ」と表現する裏側には、自身の過去の経験が重なっているからだろう。そのうえで、よねは司法の場から世の中を少しだけでもよくするという志を忘れていない。 世間から「可哀想」と思われがちな自分から脱却すべく司法試験を受けたという涼子(桜井ユキ)の話を聞いて、よねが美位子にかけた言葉も印象的だった。よねたちのところに相談に来る依頼人のひどい話と比較して自分はましだと前置きしたうえで、「世の中がクソなだけ」で美位子が「可哀想」なわけではない、とするよねの言葉のなんと温かいことか。 必要以上に自分を卑下せず、正しく世間を批判すること。よねや涼子たちのように、なにくそ、と世間と戦えない人もいる。そういうすべての人へ届いてほしいと思った。 よねの思いに感化された航一(岡田将生は)、尊属殺の事件について取り扱ってもらえるよう桂場に直談判する。時期尚早であるとする桂場に、珍しく声を荒げ「人権蹂躙から目をそらすことの何が司法の独立か!」と噛みついた。 興奮のあまり鼻血を出し、倒れてしまうところまで含めて航一らしい。なにか大きなことがあるわけではなくとも張り詰めた場面が連続していたなかで、桂場に膝枕される航一という画が微笑ましかった。
やや不完全燃焼だった美佐江の行く末は?
新潟編でやや不完全燃焼のまま終わってしまった美佐江とのやりとりに進展があったことも、今回の大きなトピックスだろう。寅子の前に現れた美佐江そっくりの少女の名は美雪(片岡凛)。のちに、美佐江の娘であることがわかる。 美佐江の母は、寅子のもとに美佐江が遺した手帳を持ってやって来る。そこには、新潟にいた頃は「特別だった私」が、東京にきたら特別ではなくなってしまったことが短く書かれていた。 美佐江は、美雪が3歳のときに、交通事故で亡くなったという。「特別な私が残っているうちに」という文面から察するに、恐らくは自ら命を絶ったのだろう。 寅子は、美佐江を救える可能性があった。彼女を「特別」から解放することができたかもしれない、恐らくはたった1人の人物だった。いまさら知ってしまったこの事実に、寅子は苦しむことになりそうだ。 泣いても笑っても、最終週。散らばっている様々な問題に、どのような答えが出されるのだろうか。 【著者プロフィール:あまのさき】 アパレル、広告代理店、エンタメ雑誌の編集などを経験。ドラマや邦画、旅行、スポーツが好き。
あまのさき