新国立劇場での「夏祭浪花鑑」歌舞伎&文楽同時期上演、坂東彦三郎ら意気込み「“新しく”つなげていく」
「令和6年9月歌舞伎公演」と「令和6年9月文楽鑑賞教室」の会見が、昨日8月5日に東京・ホテルグランドアーク半蔵門で行われた。 【画像】左から坂東亀蔵、坂東彦三郎、片岡孝太郎。(他6件) 「令和6年9月歌舞伎公演」は9月1日から25日まで東京・新国立劇場 中劇場で、「令和6年9月文楽鑑賞教室」は9月7日から22日まで東京・新国立劇場 小劇場と、いずれも新国立劇場で行われる。歌舞伎公演では、解説付きで「夏祭浪花鑑」が上演され、坂東彦三郎が団七九郎兵衛、坂東亀蔵が一寸徳兵衛、片岡孝太郎が徳兵衛女房お辰を、それぞれ初役で勤める。「令和6年9月文楽鑑賞教室」の上演演目は「『伊達娘恋緋鹿子』火の見櫓の段」と「『夏祭浪花鑑』釣船三婦内の段・長町裏の段」で、間に解説パート「文楽の魅力」が実施される。なお文楽公演は、Aプロ、Bプロ、Cプロに出演者が分かれている。 会見には、歌舞伎公演より彦三郎、亀蔵、孝太郎、文楽公演より「夏祭浪花鑑」のCプロでお辰の人形を遣う吉田勘彌、Aプロで団七の人形を遣う吉田玉助が登壇。勘彌と玉助は、大阪・国立文楽劇場からリモートでの参加となった。彦三郎は、団七を勤めることについて「予想もしていませんでした。座頭を担うのも初めてですし、『夏祭浪花鑑』も、玉島磯之丞を勤めたことはありますが、ほとんど縁のない演目。最初にお声がかかったときも、自分の役は徳兵衛だと思い、『団七は誰ですか?』と聞いてしまいました」と明かしつつ、「でも、できない人に仕事は来ないと思いますし、できないとも言いたくないので、一生懸命やります。団七は(松本)幸四郎さんに、東京の型のものを教えていただく予定です。ただ『夏祭浪花鑑』の上方の匂いを消すつもりはまったくありません。幸四郎さんに教わりつつ、出演者みんなで相談しながら、私たちの『夏祭浪花鑑』を作っていきたい」と言葉に力を込める。 亀蔵と孝太郎は、共に初舞台が「夏祭浪花鑑」の団七倅市松だったことを明かす。亀蔵は「兄が団七と聞いたとき、徳兵衛は誰になるんだろうと思っていたので、まさか自分が、と驚きました。兄弟で演じるのも、最近では珍しいと思いますので、面白いなと」と役への思いを語り、「徳兵衛は、今回の公演に釣船三婦役で出演される(市川)男女蔵さんに教えていただきます。(市川)左團次のお兄さんがやっている徳兵衛も、映像で観て憧れていたので、そのことを男女蔵さんにお伝えしたところ、『親父に聞いて覚えていることは教えるよ』と言ってくださいました。左團次のお兄さんの徳兵衛の魅力は、ちょっと悪いんだけど、可愛げがあるところ。団七と義兄弟の契りを結んだ瞬間に、ダークな雰囲気から一転、明るくなるのが、尾上菊五郎劇団っぽいなとも感じました」と話す。孝太郎は、会見の会場となるホテルについて「ここは、おじの(片岡)秀太郎が東京に滞在するときに宿泊していた場所ですので、今もおじのパワーをもらっているような気持ち」と懐かしそうな表情で言及しつつ、「団七の女房お梶は勤めたことがありますが、お辰は初めて。片岡千壽くんが、うちのおじからお辰をみっちり教えてもらっているので、今回は彼から教えてもらいます。また僕の中で、お辰と言えば嵐徳三郎さんですので、そのイメージも入れたいなと。自分なりに工夫し、上方の匂いの出るお辰を勤められたら」と意気込みを述べる。 昨日の会見では、歌舞伎公演で客席に特設の花道が設置されるほか、団七が義父・義平次を殺害する長町裏の段、通称・泥場が、オーケストラピットを活用して上演されることが明らかになった。このことについて、彦三郎は「この公演自体、“未来へつなぐ国立劇場プロジェクト”と銘打たれていますが、歌舞伎を未来へつないでいきたいという気持ちは、僕自身の中でも強くあります。ただつなげていくだけではなく、“新しく”つなげていかなければならないと思っていて。劇場の機構の関係で作品を縮小したりカットしたりするのは嫌なので、劇場にあるものは使って、新国立劇場をフレッシュに使っていきたい」と述べた。孝太郎は「ここにいる3人が全員初役、ということもそうですが、こういった形式で、文楽さんと同じ劇場で同じ狂言をやる、というのも初めて。さきほど話にあった、オケピで泥場をやるのも初めてですし、とにかく新しいことずくめなんです。さっき、彦三郎さんが裏で『初で初台ですね』と言っていましたが(笑)。でも、この新しい人たちによる、新しい『夏祭浪花鑑』が、もしかするとこれからの定番になるかもしれない、なんて思うんです。私たちも、ちょっと不安なところはありますが、一生懸命勤めて、次へつなげられる新しい歌舞伎を作っていきたいですね」とほほえんだ。 勘彌は「私、実は(徳兵衛の故郷である岡山県)備中玉島の出身で、故郷にゆかりのあるお芝居に出させていただけることがうれしい。テンションも上がります」、玉助は「私たちが今おります国立文楽劇場の近辺も、まさに『夏祭浪花鑑』のご当地ですので、作品の気分を味わっているところです」と、それぞれ場所にちなんだコメントを寄せる。さらに勘彌は「お客様には、歌舞伎との表現の違いを観ていただきたいですし、また文楽公演はABCと3組で演じます。演者によって異なる部分にもご注目いただきたいですね」と強調。玉助は、見どころを「文楽では珍しく、立廻りや見得の応酬があります。また鑑賞教室ということで、若手の技芸員が出ております。若手の力を結集して、歌舞伎に立ち向かおうとしています(笑)」と茶目っ気たっぷりに話す。また会見では、孝太郎が勘彌に「お辰の色気はどうやって出したら良いか」と質問する一幕も。勘彌は「それは私も一番聞きたいところです(笑)」とニヤリと笑いつつ、「お辰は(吉田)簑助師匠のイメージですね。具体的にどうするか、というよりは、油照りの蒸し暑い大坂の夏祭りの夕方に、一瞬涼しい風が吹き抜ける……という感覚で、お辰を遣えればと思っています」と答えた。 チケットの一般販売は、歌舞伎公演が8月13日、文楽公演が14日のそれぞれ10:00にスタート。 ■ 令和6年9月歌舞伎公演 2024年9月1日(日)~2024年9月25日(水) 東京都 新国立劇場 中劇場 □ スタッフ 「夏祭浪花鑑」 作:並木千柳 / 三好松洛 / 竹田小出雲 □ 出演 「入門『夏祭浪花鑑』をたのしむ」 片岡亀蔵 「夏祭浪花鑑」 団七九郎兵衛:坂東彦三郎 一寸徳兵衛:坂東亀蔵 釣船三婦:市川男女蔵 玉島磯之丞:市川男寅 下剃三吉:中村鷹之資 傾城琴浦:中村玉太郎 三婦女房おつぎ:中村歌女之丞 大鳥佐賀右衛門:片岡松之助 団七女房お梶:澤村宗之助 役人堤藤内:中村松江 三河屋義平次:片岡亀蔵 徳兵衛女房お辰:片岡孝太郎 ■ 令和6年9月文楽鑑賞教室 2024年9月7日(土)~2024年9月22日(日) 東京都 新国立劇場 小劇場 ※一部公演で「社会人のための文楽鑑賞教室」「Discover BUNRAKU - 外国人のための文楽鑑賞教室 -」を開催。 ※初出時、写真のキャプションに誤りがありました。訂正してお詫びいたします。