マイナス金利政策解除のタイミングからその後の日銀の政策対応に注目が移る
マイナス金利政策解除と同時にYCCを撤廃するか
主要企業の間で高い賃上げでの妥結が相次いでいることを踏まえると、今年の春闘の賃上げの結果を特に重視してきた日本銀行が、3月18・19日の次回金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除に踏み切る可能性は、7割あるいはそれ以上にまで高まってきたと考えられる。 金融市場の関心は、日本銀行がいつマイナス金利政策解除に踏み切るかから、マイナス金利政策解除と同時にどのような政策修正を行うのか、そしてマイナス金利政策解除後の政策運営へと次第に移っている。 日本銀行は、マイナス金利政策解除と同時にイールドカーブ・コントロール(YCC)を撤廃し、国債買い入れ額に新たな目標を設定するとの観測もある(コラム「3月にも日銀がYCC撤廃と国債買い入れ額目標再導入との観測:量的引き締め開始までの時限措置」、2024年3月11日)。 マイナス金利政策解除後に、長期金利の安定を確認したうえで、今年後半にYCCを撤廃するという可能性もある一方、マイナス金利政策解除後に長期金利が不安定化することを避けるために、マイナス金利政策解除と同時にYCCを撤廃し、国債買い入れ額に新たな目標を設定する可能性も、半分程度の確率であるのではないか。 しかし、それは「量」を目標とする政策運営に回帰することを意味するものではない。長期金利の安定を維持しながら、正常化のプロセスを進めるための一時的な対応である。日本銀行が長期国債の保有残高を削減し、マネタリーベースの縮小を始める、いわゆる量的引き締め(QT)開始までの移行措置だろう。
フォワードガイダンスの修正とETF買い入れ額上限の撤廃
マイナス金利政策解除と同時に修正されることがほぼ確実なのは、先行きの金融政策の方針を示すフォワードガイダンスである。現在のフォワードガイダンスは、「必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」というもので、コロナ問題発生時に導入した緩和バイアスのガイダンスだ。これを、金融引き締め方向のフォワードガイダンスへと一気に転換するだろう。 また、「ETF、J-RIETをそれぞれ年間約12兆円、年間1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に買い入れる」という方針を、マイナス金利政策解除と同時に撤廃するとの観測もある。この方針もコロナ問題発生時に導入した古いものだ。日本銀行は実際には、ETF、J-RIETをほぼ購入しなくなっており、この買い入れ上限額の方針は形骸化している。そのため、マイナス金利政策解除、政策転換と同時に、買い入れ上限を撤廃することは十分に考えられる。 しかし、ETFの買い入れ策の正常化では、どのように日本銀行の保有額を減らしていくかが最も重要である。この点についての対応は、かなり先になるだろう。