鈴木梨央が語る アマンダの考え方や話し方など、いろんな角度から考え色付けして役に寄り添って演じた『屋根裏のラジャー』
演じるキャラクターのイメージは、丹念に重ね合わせて創り上げる
池ノ辺 梨央さんは小さい頃から、ドラマや映画で役者として、また声優として仕事をたくさんされていますけれど、自分が演じるのと声だけのお仕事ではずいぶん違いましたか? 鈴木 気持ちの面では違いはないと思います。俳優のお仕事の場合は台本を読んで1から人物像を作っていくという作業ですが、声優のお仕事の場合は演じるキャラクターの動きや仕草などを参考に色付けしていくような感覚です。 今回はアマンダというキャラクターが存在していたので、アマンダの年齢やイメージの上で彼女がどんな事を考え、どんな風に話すのかを、いろいろな角度から考えてアマンダに寄り添って演じていきました。 池ノ辺 出来上がったキャラクターに声を入れて生き生きさせるというような? 鈴木 自分の声によって、キャラクターの表情が変わったりします。逆に自分が声で想いを表現していかなければ、キャラクターの想いや表情が何も変わらないし伝わらない気がします。自分が思い描くキャラクターのイメージと監督さんや作品に関わる方々の持つイメージを照らし合わせ重ね合わせて、そのキャラクター、人物が、より厚みや深みを持った存在になるように、みなさんと一緒に意見を出し合って詰めていくということが多いです。 池ノ辺 アマンダを演じる上で、どういうところが難しかったですか。 鈴木 アマンダが一人でいて感情が込み上げてくるというシーンがあったんですが、そこはアマンダの気持ちの変化、感情の出し方が難しかったですね。 池ノ辺 そんなに大変だったようにはみえませんでしたよ。今回のアマンダは、すごーーくアマンダでした(笑)。本当にアマンダが泣いたり笑ったり、楽しんだりというのがスクリーンの中で表現されていて、とても良かったです。 鈴木 嬉しい(笑)、嬉しいです。 自分の身近にいてくれる存在の大切さに気づいてほしい 池ノ辺 この映画を観て、私も子どもの頃、いろんなことを想像して空想の世界を作っていたなということを思い出しました。大人になると空想の世界というより、単なる妄想になったりするんですけどね(笑)。梨央さんは子どもの頃はどういう子だったんですか。 鈴木 小さい頃から、家族と一緒にドラマを見ることが多かったので、自然とドラマが好きな子になっていました。遊びもドラマのシーンを自分で演じるようなことが多かったです。お母さんに見てもらいたいと思って、セリフを紙に書いて覚えて、頑張って練習もしました。一人でやる時には、白い画用紙に相手役の似顔絵を描いて壁に貼って、その絵を相手に会話をする。そうした遊びを小さい頃本当によくしていたんです。今考えると、それこそが自分の想像力の源になっていたのかもしれません。 池ノ辺 その似顔絵がラジャーみたいな存在だったんですね(笑)。 鈴木 確かに、アマンダにとってのラジャーのような、自分にとってのイマジナリ、そういう存在だったのかなと思います。 池ノ辺 じゃあ、お仕事のための練習も、その子が相手になってくれたんですか。 鈴木 遊びの感覚でセリフの練習をするというのはよくありましたね。 池ノ辺 今の梨央さんにとってのイマジナリは? 鈴木 空想というわけではないんですが、友達からもらったストラップやキーホルダーなんかを宝物にして集めています。そしてその時の気分で持ち歩いて、たとえばオーディションに行く時などにカバンにつけたりして、そこから力をもらっています。それが今の自分にとってのイマジナリなのかなと思います。 池ノ辺 せっかくなので、梨央さんから、この映画を観る皆さんにメッセージをいただけますか。 鈴木 ラジャーとアマンダが冒険しているシーンの楽しさ、ラジャーの純粋な気持ち、そうしたものを感じ取ってくださると嬉しいです。そして何よりこの物語は、近くにいる存在、叱ったりほめたりしてくれる人、そういう身近にいる人たちの存在、そういう人がいてくれるということが決して当たり前ではないということにも気づかせてくれる作品だと思います。観てくださった後に、自分の周りにいる人たちの気持ちを想い合ったり、当たり前にみえることがすごく大切なんだということを少しでも考えていただけたらいいなと思います。 池ノ辺 梨央さんは、子どもの頃からずっと演じる仕事をされてきたわけですが、梨央さんにとってのドラマや映画は、どんな存在ですか。 鈴木 ドラマや映画は、本当に小さい頃から身近なものでした。私にとってドラマや映画とは、自分がそれまで思ってもみなかった気持ちに出会わせてくれたり、感情が込み上げてきたり、自分の考えが変わったり、新しいものがインプットされたり、そういった心が豊かになったり、世界を広げてくれるような存在だと思います。そしていつしか、それを観るだけでなく、自分が表現者として皆さんにそうしたものをプレゼントできるような存在になりたいと思うようになりました。 池ノ辺 すばらしい!今回の作品はまさにそんな存在だったと思います。私もアマンダから元気をもらいました。これからも応援しています。 鈴木 ありがとうございます。
インタビュー / 池ノ辺直子 文・構成 / 佐々木尚絵