「本番始まったら頭ン中が真っ白で…」今年は二人で! 朝ドラから出てきた紅白司会者たち
22年ぶりに司会に抜擢された朝ドラ女優・斉藤由貴だったが……
そんなことで翌年から女優が司会をすることがなくなり紅組の歌手の中から司会者を立てる時期が続いた。それでも「朝ドラ」でスター女優に育ち、発表前の雑誌や新聞で「紅組司会者有力」と報じられていた人たちはいた。 林から10年後の昭和50(1975)年前期の『水色の時』のヒロイン、大竹しのぶである。さらに翌51(1976)年前期の『雲のじゅうたん』の浅茅陽子はほぼ内定と言われたがともに見送り。安定の紅組メンバーのひとり、佐良直美がつとめた。 55(1980)年には『なっちゃんの写真館』の星野知子がマークされ、「夏の紅白」といわれていた人気番組『思い出のメロディー』の司会にまず抜擢されたが、結局は黒柳徹子が22年ぶりの司会者に。さらに60(85)年には『澪つくし』の沢口靖子が最後まで森昌子と競ったが、昌子が翌年結婚引退の話題が持ちきりだったことで昌子が初司会。翌年、噂通りに引退した。 そして翌年である。とうとう林美智子以来初の「朝ドラ」ヒロインが「紅白」司会に指名された。 それが『はね駒(こんま)』(昭和61〈1986年〉)の斉藤由貴20歳だった。彼女は歌手としても初出場だったが、やはり「独特の雰囲気」を跳ね返せるほどのすべも知らなかったし、場数も踏んではいなかった。 そこから三度「朝ドラ」から司会に選ばれたのが、平成4(1992)年、やはり20歳だった『ひらり』の石田ひかりだった。下馬評では貴花田と婚約(その後解消)した宮沢りえ、西田ひかる、森口博子、坂本冬美、小泉今日子が最終候補に残っていたが、平成になってからの「紅白」は、男女の対抗というイメージが弱まったこともあり、ベテランの白組司会、堺正章や総合司会の山川静夫アナウンサーとともにはつらつと司会。翌年も続行した。 そのあとは上沼恵美子や和田アキ子のベテラン、久保純子、有働由美子らNHKアナウンサーのあとの数年間は、大河ドラマ『功名が辻』などにも出演した仲間由紀恵が、紅組を引っ張ってゆく時代が続いた。 ◆松下奈緒、井上真央、堀北真希…「朝ドラ=紅組司会」のイメージがスタートした平成22年 そんな中で久々の「朝ドラ」登板。それが平成22(’10)年、『ゲゲゲの女房』の松下奈緒だった。実はここから平成中はほとんどが「朝ドラ」ヒロインがつとめることになり、いつの間にか「朝ドラ=紅組司会」のイメージが作られていくのである。 松下の翌年の23(’11)年には『おひさま』の井上真央が、さらに翌24(’12)年が『梅ちゃん先生』の堀北真希と続く。大河『八重の桜』の綾瀬はるかを挟んで、平成26(’14)年にはふたたび朝ドラ『花子とアン』の吉高由里子、28(’16)年には次期『ひよっこ』のヒロインが決まっていた有村架純が登場、好評で翌年ドラマを経て国民的女優に成長して、2年連続紅組司会をつとめている。そこを狙って翌年平成最後の30(’18)年も、’19年春から放送の『なつぞら』の広瀬すずが決まったのである。 はじめの頃は、朝ドラに出てスターになる! という図式だったが、現在は人気俳優がヒロインをつとめているから、こうした放送前年から司会をつとめ、朝ドラへというスタイルに変わったということになる。 昨年は『ブギウギ』の趣里も有力候補などと言われていたが朝ドラヒロインが司会をするのは、実は今回、広瀬すずがつとめた平成30(’18)年以来のこと。令和になって初めてなのである。それも前期後期の人気ヒロインが一緒に登場するということは、若者だけではなく中高年の視聴者層にもよく知られた顔ということになるわけだ。 国民的人気女優が国民的歌番組をリード。3年目の橋本環奈の安定感に「寅子」伊藤沙莉がどこまで明るく、跳ねてお祭りを盛り上げてくれるかが楽しみである。 文:合田道人 1979年、高校在学中に渡辺プロダクションから、シンガー・ソング・ライターとしてデビュー。その後、音楽番組の構成演出、司会、CD監修解説に加え、新聞、雑誌での執筆、作詩作曲、ラジオDJなど多方面で異才を発揮する。著書に『童謡の謎』『神社の謎』『昭和歌謡の謎』(祥伝社) 『怪物番組紅白歌合戦の真実』(幻冬舎) 『歳時記を歌った童謡の謎』(笠間書院)などがあり、1月には『歌は世につれ♪ 流行歌で振り返る 昭和100年』(笠間書院)を発売予定。司会を務める『日本歌手協会 新春12時間歌謡祭』が1月2日昼12時から24時までBSテレ東で放送される。12月には五木ひろしに提供した「こしの都」で日本作詩大賞審査員特別賞を受賞した。
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