70代が支える“マイカー社会”の現実! 免許返納後、移動の選択肢はどう変わるのか?
自動車利用の実態
筆者(牧村和彦、モビリティデザイナー)が理事を務める計量計画研究所が先日公表した全国の道路利用者特性結果(データから読み解く~新型コロナ後の新たな自動車利用動向~)に、2021年の最新動向がまとめられている。 【画像】自動車ユーザーなんと「平均58歳」 仰天のデータを見る! それによると、普段道路を走行している人の平均年齢は57.6歳、最も多い年齢層は 「70~74歳」 と報告されている。10年前は60~64歳が最頻値であり、20年前は45~50歳だったそうであり、まさに団塊の世代が今もなお道路利用の“中心”であることを物語っている。 いまやマイカーは日常生活になくてはならない存在であり、地方都市だけではなく、大都市郊外部においても同様だ。前橋市の調査では、100m移動するのに4人にひとりはマイカー利用であり、クルマの 「下駄(げた)化」 を象徴する数字だ。突然自動車を利用できなくなる状況はそう簡単には想像できない。皆さんがもし運転ができなくなってしまった場合、いつも出掛けていた理髪店や美容院、スパーへの買い物など、どのようにしたら行くことができるか、どの程度の時間がかかるのか、考えてみたことはあるだろうか。 最寄りの停留所を知らない人が日常的にマイカーを利用する人には多く、路線バスの乗り方、運賃、運賃の支払い方法、帰り方などもあまり知らないか、昔の記憶のままの人も多いと聞く。乗車するのに 「前乗りなのか後乗りなのか」 「前払いなのか、後払いなのか」 そのようなことを考えているだけで、利用をためらう人に筆者は数多く出会ってきた。
大ブームの「カーフリーデー」
海外では、年に一度、9月22日に「カーフリーデー」というイベントが大ブームだ。今年2024年には45か国が参加し、2700を超える都市でクルマとの付き合い方を考えるイベントが開催された。 近年は欧州委員会がグリーンな移動を推進する機会として、持続可能な社会の実現を目指すモビリティウィークという名称で、1週間開催している(2024年の開催は9月16日~22日まで)。毎年テーマを掲げており、2024年は 「公共空間を共有しよう」 だ。道路は公共のための空間であり、道路利用者のためだけではなく、歩行者や自転車を含む皆のための道路であり、道路の価値を再認識するためのイベントとして企画された。日本でも2024年は、 ・杉並区 ・逗子市(神奈川県) ・金沢市 ・福井市 ・豊橋市(愛知県) ・日野町(滋賀県) ・大阪市 ・福山市(広島県) の8都市が参加した。カーフリーデーは、 「日本のノーカーデーとは全く異なる考え方」 である。ノーカーデーは月に一度など公共交通利用を促す取り組みの総称であるのに対して、カーフリーデーは、クルマ社会と向き合い、クルマとの付き合い方を考える啓発活動である。 カーフリーデーの取り組みを通して、気候危機の現状を学び、毎日生じる交通事故のリスクなどにも触れ、それぞれのライフスタイルや価値観に合った移動を改めて再考してもらう機会を提供するものだ。この期間だけ街中の道路を歩行者天国にして、人であふれる空間を体験してもらい、体験を通して公共空間の価値を市民で考える機会を提供する都市も数多くある。 その結果、毎日がノーカーデーになる人もいれば、自動車の保有を止めて、公共交通や自転車で生活する人もいる。時々は公共交通を利用してみようと考える人もいるだろう。