『劇場版ハイキュー!!ゴミ捨て場の決戦』は原作未読でも問題なし! 観客を勇気づける熱
研磨がもうひとりの主人公
さて、『ハイキュー!!』の主人公は烏野高校の日向だ。もちろん、それは変わらないのだけれど、今作において大きくフューチャーされるのは音駒高校の孤爪研磨だ。 スポーツマンタイプというよりはインドアタイプでゲームが好きな研磨。そんな研磨がどうしてバレーボールを始めたのか。どうして、烏野、日向との対戦に熱くなれるのか。多くのシーンが研磨目線で描かれており、これまではどちらかというと何を考えているのかよく分からない……という彼の思考や感情が克明に描かれている。 そして同じコートに立つキャプテン・黒尾との関係にもスポットが当たる。幼なじみで、研磨がバレーを始めるきっかけを作った人物だ。 そんな黒尾との関係が回想で挟まれていくのがグッと来る。黒尾は3年生、全国大会でひとつでも負ければ、彼の高校バレーが終わる。もちろん、研磨はそんなことを気にするタイプではない。目の前にいる相手をどのように攻略していくかを淡々と考えるだけ。それでも、最強の相手を前に、高揚していく自分の心を抑えきれず、自分のバレーの原点へと還っていくさまが回想から伺える。 勝っても負けても、このメンバーでやる試合に“もう一回”はない。試合を終えた瞬間、研磨が抱く感情にぜひ注目してほしい。
上を向け、ボールを落とすな
烏野高校は超攻撃型のチーム、一方音駒チームは守りが堅いチームだ。そんなチームが対決すれば激しいラリーが続くことは必至。疲れた、でもボールを落としたくない。まだ試合を終えたくない。ワンシーン、ワンシーンにそんな選手たちの想いがあふれている。足が止まりそうになっても、このボールを落とさないために上を向き続ける。その姿は、観る人の心を勇気づけることは間違いない。
ふくだりょうこ