他者には伝わらない苦痛...感覚過敏がある子どもへの寄り添い方
実はこれも感覚の偏りが原因!?
感覚過敏のある子が感じている世界は、周囲には理解し難く、「なぜ?」と思う場面も少なくありません。「なぜ?」と感じる行動のワケを、岩瀬先生、大庭園長のおふたりに推測してお答えいただきました。 Q.小さな空調の音を捉えて「うるさい」というほどよく聞こえているAくん。その一方で、呼びかけても反応がなかったりするのはなぜ? A.たくさんの音の中から、必要な音だけを聞き取ることが苦手な子もいます 聴覚過敏には、「まわりの人が気づかない小さな音が気になって物事に集中できない」「特定の音で耳や頭に痛みを感じる」というケースのほかに、「雑音がすべて大きく聞こえるため必要な音を聞き取れない」というケースもあります。 Aくんの場合は、どちらの特性もあるのかもしれません。 声が伝わりにくい場合は、Aくんの視界に入り、触られるのが平気なら軽くタッチしながら声をかけるなどして注意を促すとよいでしょう。(岩瀬先生) Q.直前までご機嫌だったのに、急に外に出ることを激しくいやがることがあるBちゃん。何が原因なのでしょう? A.耐えがたい刺激があるのかも? という前提で注意深く観察を 外に出るのをいやがる理由がわからないと、おとなも対応に悩みますね。 激しく拒んだときの屋外の状況を記録しておくと、日差しが眩しかった、強風が肌に当たり痛かったなど、屋外特有の刺激に苦痛を感じたのではないかと推測できます。 原因がわかれば、刺激を軽減する対応も考えやすくなります。(大庭園長) Q.ものや人によくぶつかるCくん。友だちとぶつかっても知らんぷりなので、友だちとトラブルになることが多いです。 A.ぶつかったことに気づいていない可能性も Cくんは、感覚鈍麻で刺激の感じ方が鈍いため、ぶつかったことに気づいていない可能性もあります。感覚鈍麻で痛みに鈍いと、ケガをしても気づきにくく危険なこともあります。(岩瀬先生) 人やものにぶつかる場面を見たら、ぶつかった箇所に触れながら「今ぶつかって痛かったね。ぶつからないように気をつけようね」と周囲への注意を喚起して、人やものにぶつかったことに気づけるように促しましょう。(大庭園長) 岩瀬利郎 東京国際大学医療健康学部准教授/日本医療科学大学兼任教授。埼玉石心会病院精神科部長、武蔵の森病院院長、東京国際大学人間社会学部専任教授、同大学教育研究推進機構専任教授を経て現職。精神科専門医、睡眠専門医、臨床心理士・公認心理師。 大庭正宏 東京都羽村市で運営する2つの保育園で、インクルーシブ保育の実践に取り組む。児童発達支援事業所「発達支援Kiitos 羽村」では、ソーシャルインクルージョンを地域へと広げる活動を行っている。
岩瀬利郎(医師)、大庭正宏(太陽の子保育園園長)