中国で流行の「ヒトメタニューモウイルス」感染症。延べ90億人大移動の春節連休に拡大懸念
中国で「ヒトメタニューモウイルス」(HMPV)という聞き馴染みのない呼吸器ウイルスの感染が拡大している。 【全画像をみる】中国で流行の「ヒトメタニューモウイルス」感染症。延べ90億人大移動の春節連休に拡大懸念 同ウイルスは幼児を中心に感染し、インフルエンザと似た症状が特徴で、肺炎など急性呼吸器症状の原因となる。そんな中で1月下旬に始まる春節(旧正月)に伴う連休中には過去最多となる延べ90億人の大移動が見込まれていることから、さらなる感染拡大が懸念されている。 中国のソーシャルメディアでは、年末年始にマスクを着けた患者や家族が病院に押し寄せ、ごった返す様子を撮影した動画や写真が投稿されている。 中国政府で感染症対策を担う「中国疾病予防コントロールセンター」によると、ヒトメタニューモウイルス感染症は昨年11月から同国北部から感染が広がり、南部でも患者が増加している。 WHO(世界保健機関)は1月7日、ヒトメタニューモウイルス感染症が中国で感染が増えていることを確認しているが、「感染者の規模はこの時期に想定される範囲内」としていることを明らかにした。その上で、今後も中国当局と協力し、監視を続けるとしている。 中国側はWHOに「医療システムは逼迫(ひっぱく)していない」と伝えているという。 同日、WHO本部があるジュネーブで会見したハリス報道官は、ヒトメタニューモウイルスが新型ではないとし、致死率は低いことなどを説明した。 また、中国外務省の毛寧(もう・ねい)報道官も1月3日、「呼吸器感染症は冬季にピークを迎える傾向がある」とし、「昨年に比べて、これらの病気はそれほど深刻ではなく、規模も小さい」と強調していた。 問題のヒトメタニューモウイルスとは一体何なのか。 同ウイルスは2001年にオランダの研究グループが発見したものだが、実際は従来から存在したものだという。風邪やインフルエンザに似た症状を引き起こす呼吸器ウイルスで、通常は軽症だが、乳児や高齢者、免疫力が低下している人は肺炎などの重篤な合併症を引き起こすリスクがある。 症状としては咳、発熱、鼻づまり、倦怠感などがあり、潜伏期間は3~6日とされる。新型コロナウイルスとは異なり、ワクチンや特定の抗ウイルス治療薬はまだないため、対症療法が施される。ヒトメタニューモウイルスはすでに香港で数件の症例が報告され、近隣諸国は状況を注視している。 カンボジアの感染症対策局は、同ウイルスが新型コロナウイルスやインフルエンザに似ていることを指摘し、国民に警告を呼びかけた。台湾の疾病管理センターも子供や高齢者、免疫不全者にとって高リスクだとして、注意喚起をうながしている。また、インド当局者は、ヒトメタニューモウイルスがほかの呼吸器ウイルスと同じで、「パニックになる必要はない」と冷静な対応を求めている。 一方、コロナ禍後の内需低迷を補うべくインバウンド誘致に注力する中国は、「政府は中国国民と外国人訪問客の健康に留意し、保証する」(中国外務省)とした上で、中国での旅行の安全性を強調した。 だが、国営新華社通信によると、1月28日から2月5日まで8連休となる今年の春節に伴う地域をまたいで移動する人は昨年より7%増え、過去最多となる延べ90億人前後になる見込みだとしていることから、ヒトメタニューモウイルスのみならず、インフルエンザなどの感染拡大が懸念されている。 同通信によると、移動手段としては、鉄道が延べ5億1000万人、航空機が延べ9000万人などと予想されており、それぞれ昨年の実績を上回るという。
The News Lens Japan