「仕事がつらい」モードを切り替えるための正しい休み方、「闘う」でも「逃げる」でもない第3の選択肢
人はあまりにつらすぎると、つらいという感情も含めたありとあらゆる感情を感じなくなるという。休んでも疲れが取れない。気力も体力も奪われ、動くことすらできない。そうした状態に陥ってしまった時はどうすればいいのだろうか? 心療内科医の鈴木裕介氏は、その解決のヒントとして、「戦う」でも「逃げる」でもない「フリーズ(=固まる)」という選択肢の重要性を説きます。現代社会において、なぜ「フリーズ」が重要なのかを、鈴木氏の著書『心療内科医が教える本当の休み方』を一部抜粋・再構成して解説します。 【図で見る】あなたにも経験があるかもしれない?“凍りつきの状態”“氷のモード”の具体的なケース
■従来の理論では“説明のつかない”症状 「ストレス学の祖」ハンス・セリエのストレス理論以降、ストレス状態とは交感神経と副交感神経のバランス不全と考えられてきました。しかし、近年になって、この二元論では説明がつかないケースが増えてきているように思います。 たとえば、「適応障害・抑うつ状態」という診断で、会社の産業医から休職をするように言われたAさんは、2~3か月の休養と通院によって、意欲や集中力が回復してきました。
食事も十分に取れていて、集中力も回復し、余暇としてのゲームやスポーツを友人と楽しめる状態になったのです。復帰に十分な回復をしたと判断し、主治医は復職の許可を出しました。 しかし、復職の直前のタイミングになって急に意欲や集中力が低下し、朝の頭痛やだるさが続いて起きられなくなってしまいました。 無気力な状態やぼんやりした感じが続き、特に気圧が低くなると、ずきずきと頭が痛くなるとともに気分が悪くなり、身体の重さと気分の落ち込みが増して、寝ても寝ても眠気が取れずにずっとだるさを抱えてしまいます。疲労感が抜けず、抗うつ薬もあまり効果がみられません。
別のBさんは、仕事で詰められすぎて、明らかに無感情・無気力になっているのに、「生ける屍」のように服従的に働き続けていました。明らかに体調が悪そうなのに、「つらいとかはあまり感じないので、大丈夫です」といって、産業医の休職勧告にも応じずにずっと働いていたのです。 エンジニアのCさんは、会社で強い口調の上司に幾度となく詰められていました。「なぜ?」「根拠は?」と執拗に聞かれても、頭が真っ白になって答えられず、反論もできなかったのです。