/下 「体幹」「体軸」を強化 冬場に地道な練習 /青森
<第91回選抜高校野球> 「全国制覇は布団で寝て見る夢か?」。春のセンバツ出場が決まった後の1月下旬。練習後、八戸学院光星の室内練習場に仲井宗基監督の声が響いた。出場決定に安堵したのか、選手たちの表情が緩んでいるように仲井監督の目には映った。 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 「野球は楽しいもの。だから、練習は苦しんで鬼の形相でやらなあかん。本気で優勝したくないんか」。並んだ選手たちの目は、再び真剣なまなざしに変わった。 ◇ 昨秋の東北大会。光星は全4試合で、計38安打を放ち、いずれも3失点以内に抑えて東北王者に輝いた。一方で、全国から強豪が集まったその後の明治神宮大会では、準々決勝で投手陣が崩れて高松商(香川)に14安打を浴び、6-9で敗北。失策も目立った。 仲井監督は「明治神宮大会で、まだ全国レベルではないと改めて思い知らされた」と振り返る。冬場はグラウンドが積雪で使えず、室内練習場での練習が中心になる光星。時間も限られた冬場のトレーニングに工夫を凝らさなければ、センバツの勝利にもつながらないとチームは痛感した。 「スイングスピード10キロアップ、球速10キロアップ」を選手に課してきた仲井監督は、冬場の練習メニューの改革を進めた。特に意識したのが、持てる力を効果的に発揮するための「体幹」と「体軸」の強化だ。昨シーズンから約1年間、続けてきた体幹トレーニングに加え、明治神宮大会後は体の軸を鍛える用具も積極的に取り入れた。 円柱状の筒に空気と水が入ったウオーターバッグもその一つ。毎日の打撃練習の合間に、バッグを真上に掲げながら一歩前に踏み込む。中で揺れる水をコントロールしながらバランスを取るため、体幹の強化につながり強打や制球力アップに効果がある。 もう一つは左右に滑るスライドボードだ。コーチらのかけ声で一斉に滑り始め、中には打撃の構えをしながら滑る選手も。内ももの筋肉などが鍛えられ、打撃や投球の際に軸がぶれにくくなる。どちらも地味だが、限られた練習時間を有効に使うことができた。 また、投手陣の練習メニューを再考。ネットに向かって近距離から投げるネットスローでフォームを徹底してチェックした。金足農(秋田)の吉田輝星投手らを育てた八戸学院大の正村公弘監督も、頻繁に練習場を訪れた。制球力が課題の一つだった左腕の横山海夏凪投手(3年)は、助言を受けてテークバックでの腕の下がりを修正。コンパクトな腕の振りが体になじむにつれ、「少しずつ安定感が出てきた」という。 ◇ 厳しい寒さが続いた冬の八戸。ある日の練習終わりのストレッチで、室内練習場のライトに照らされた60人の選手の体からは、白い湯気が立ち上っていた。「全国制覇は布団で寝て見る夢か」。紫紺の優勝旗が白河の関を越える日は遠くない。第91回選抜高校野球大会は23日に開幕する。(学年は新学年)