玉城デニー知事「欧州では自国法令を米軍に適用させている」 日米地位協定の改定 東京で識者らとシンポ
日米地位協定について考える沖縄県主催のシンポジウムが10日、都内で開かれ、玉城デニー知事や有識者らが協定の問題点や改定に向けて何が必要かを議論した。玉城知事は他国の協定と比べ、日本では原則国内法が適用されず、米軍に裁量を委ねる形で運用されていると報告。パネルディスカッションでは、改定には世論の盛り上がりが不可欠だとして、世論喚起の必要性も指摘された。(東京報道部・嘉良謙太朗) 【写真】ナンバープレートがない米軍車両 県は米軍が駐留する他国の協定を調べるため、ドイツやイタリアなどで現地調査を実施。玉城知事は「欧州などでは自国の法令を米軍に適用させ、活動をコントロールしている」と述べ、基地から派生する諸問題の解決には協定の抜本的な見直しが必要と訴えた。 東京工業大学の川名晋史教授は、改定できない理由として全国で問題が共有されず、ナショナリズムの方向性が米国に向かわないためと分析。「諸外国の場合、基地問題は対米問題だが日本では政府と沖縄の対立という形で矮小(わいしょう)化されている」との見方を示した。 ジャーナリストの布施祐仁氏は「改定した国は世論が盛り上がり、それが圧力になっていく。米国に対し、譲歩しないと駐留そのものが危うくなると思わせないといけない」と主張。米国に強い態度で臨むためにも、米国に防衛を依存しているというマインドを変えていくべきだとも語った。 弁護士の三宅千晶氏は「どんな政府を選ぶのか、考えて行動することでしかこの問題は変えられない」と述べ、自分事として捉える必要性を強調。ドイツでは米軍の低空飛行を差し止めた判例があるとし、日本の司法の場で海外の事例を訴えていくことも重要とした。 シンポジウムでは、イタリアで1998年、米海兵隊所属機がロープウエーのケーブルを切断、観光客ら20人の死者を出した事件の調査に当たった元イタリア空軍参謀長のレオナルド・トリカリコ氏も基調講演。「(米軍には)機会あるごとに私たちが招いている客だと意識させ、日本の文化や法律を尊重するよう意識させるべきだ」と述べた。