トラックにひかれ瀕死の重症負った雑種犬「うめちゃん」 救ってくれた飼い主と登校見守り13年
かつてトラックにひかれて瀕死(ひんし)の重傷を負った雑種の雌犬「うめちゃん」。命を守ってくれた飼い主の中村香代さん(77)=福岡県飯塚市片島2丁目=とともに近所の交差点に立ち、13年間児童の登校を見守ってきたが、9月末で引退した。今月1日に飯塚署から感謝状が贈られ、中村さんは「家族と同じくらい大切な存在で、相棒です」と長きにわたる苦労をねぎらった。 【写真】近所の小学生から贈られた手書きの感謝状 うめちゃんと中村さんが出会ったのは2010年春ごろ。家族で営むガソリンスタンド周辺をうろうろしていたが、数日後に国道でトラックにはねられているのを発見。震えるうめちゃんを動物病院に運んだが、足と腰の骨が折れ、「安楽死」を勧められた。諦めきれず別の動物病院へ行くと、腰に人工骨を入れる手術を経て一命を取り留めた。 事故からしばらくして、片島地区の自治会長を務める中村さんのパトロールについてくるようになった。中村さんのそばで「わんわんパトロール」と記した黄色いベストを身に着け、雨の日も雪の日も、児童の安全を見守ってきた。登校中の児童が声をかけるために立ち止まることで、安全確認に一役買った。 そんなうめちゃんも推定17歳。人間なら90歳ぐらいで、おばあちゃんだという。出会った頃は黒々していた顔の毛も、すっかり白くなった。6月には右足に悪性の腫瘍が見つかった。春と秋の交通安全県民運動期間には、毎日通学路に立ってきたが、今秋でパトロールに区切りを付けた。 ワンワンワンの犬の日にちなんだ11月1日、中村さんのガソリンスタンド。飯塚署から贈られた感謝状には「愛くるしい姿で子ども達の笑顔を守ってこられました」と記されていた。通学を見守った児童からも「笑顔で学校に行けました」「うめちゃんヒーロー」と手書きの感謝状が届いた。 「これからは自由に散歩させてあげて、静かな晩年を過ごさせてあげたい」。中村さんは、感謝状をもらって少し誇らしげに見えた相棒の顔を、優しく見つめた。 (中山雄介)