シャアの復讐がミネバに及ばなかったのはなぜ? 「ロリコンだから」ではない…はず!
実は復讐心が薄らいでいたシャア
ではなぜシャアは、ミネバに害をなすどころか、普通にかわいがっていたのでしょうか。それは、ミネバに関わるようになった時点ですでにザビ家への復讐という目的は果たされていたから、という見方もできるでしょう。 そもそも、シャアがザビ家を恨んでいる理由は、「デギン・ソド・ザビ」が、シャアの父親で当時のジオン共和国首相だったジオン・ズム・ダイクンを暗殺して国を奪った、と思っていたからです(劇中、暗殺という直接描写はありません)。ここからシャアが「復讐」として考えることは、「父親の仇をとる」「奪われた国を取り戻す、ないし、元の国体に戻す」の2点であると見てよいでしょう。 そうであるならば、シャアはザビ家の一族郎党を根絶やしにしたかったわけではなく、父親を殺した当事者や国の簒奪者(さんだつしゃ/公国の指導者たち)を排除(殺害を含む)できれば、目的は達成されるわけです。シャアがミネバの教育係をしているころには、ジオンの国体は公王制から共和制に戻っています。あえてミネバを殺す意味はなさそうです。 さらにシャアの復讐心そのものも、一年戦争末期には薄らいでいました。最終決戦の地、宇宙要塞「ア・バオア・クー」でシャアは、妹の「アルテイシア・ソム・ダイクン」こと「セイラ・マス」と遭遇し、「兄さんの敵はザビ家ではなかったの?」と問われ、「ザビ家打倒など、もうついでのことなのだ」と答えています。直後にデギンの子供たちで最後に残された「キシリア」を殺しているものの、そこでシャアの「復讐心」は、すっかりひと区切りついてしまった、と見ることができるでしょう。 本当のところはわかりませんが、シャアがミネバを殺さなかったのは何か意味があるのは確かです。もしシャアがミネバを殺していたら、『機動戦士ガンダムUC』で主人公の「バナージ・リンクス」が「オードリー・バーン」ことミネバと出会うこともなくなってしまいます。そうなれば「ラプラスの箱」も開かれない可能性があるので、私たちの知る宇宙世紀とはまったく違う歴史が紡がれたことでしょう。
LUIS FIELD