県民の文化遺産「交響詩曲ぐんま」を忘れないで 複数の市民合唱団が地元・渋川市で演奏会
群馬県が作曲家の服部良一氏と作詞家の鈴木比呂志氏に制作を依頼し、明治百周年事業の一環として昭和46年に発表された「交響詩曲ぐんま」の演奏会が20日、同県渋川市の市民会館で開催された。市民合唱団など複数のグループが協力し、オペラ歌手の角田和弘さんらプロの声楽家も加わった約60人の合唱団が、23年ぶりに全10曲を歌い上げた。 【写真】演奏会に先立ってステージで「交響詩曲ぐんま」について語る鈴木喜代さん 交響詩曲ぐんまは、依頼を受けた2人が2年かけて群馬を訪ね歩くなどして制作。群馬の自然や文化を表現した、いわば県民の交響曲。46年10月、同様に明治百周年事業として県が建設した県民会館(前橋市)のこけら落としとして服部氏が指揮して披露された。 「序曲・明け行く山々」で始まり、日本に旧石器時代が存在したことを証明した遺跡を取り上げた「岩宿幻想」、東日本最大の古墳を有する群馬らしい「埴輪と碑」と続く。以下、「街道懐古」▽「上州旅情」▽「風神雷神」▽「蚕」▽「温泉(いでゆ)賛歌」▽「暮れゆく尾瀬」▽「終曲・あすへの足音」-となっている。 初披露から30年となる平成13年まで、群馬交響楽団なども入った演奏会が行われたが、その後、関係者の高齢化や1時間に及ぶ重厚さなどから歌われることもなくなり、市民グループが歌いやすい「温泉賛歌」など数曲を何度か公演で紹介する程度になっていた。 今回の演奏会を主催した「いちご会コーラス」の鈴木喜代さんによると、全曲が披露されるのは平成13年以来、初めてという。「八木節なども入れ込んだ文化遺産といっていい交響詩曲が群馬にあることを忘れずに、ぜひ歌い継いでいってほしい」と語った。 演奏会はソプラノ歌手の深津素子さんの独唱による「浜辺の歌」など3曲▽交響詩曲ぐんま▽角田さんの独唱「出船」「箱根八里」など3曲-の3部構成の約2時間。会場には約1000人が詰め掛け、盛大な拍手を送っていた。