千賀に内川&松田アベック弾無視儀式。ソフトに西武追撃の役者が揃ってきた
ストレートは153キロが出ていたが、若干、浮いていた。それを察知した甲斐は、2回以降、フォーク以外の変化球を多目にミックスする配球でリードした。 「(甲斐が)曲がり球でうまく作ってくれた。打者に向かっていくこと、攻める気持ちを前面に出した。しっかりとゲームを作れたのは良かった」 116球の球種別の配分は、ストレートが43%、フォークが26%、スライダーが20%、カットが10%、カーブが1%という割合でスライダーとカットの“横の変化”が効果的だった。 ロッテベンチは千賀の予想していたデータにない姿に困惑していた。 「変化球が多くて打ち切れなかった」と井口監督。ロッテは、足でプレッシャーをかけて、フォークを使いにくい状況を作り、打者は、その低めのフォークを見極めていくという戦術を徹底するつもりだったが、それが崩れ、スコアを追いかける展開になると、ついついボール球に手が出るという負のスパイラルから抜け出せなかった。 「三振は? 10個でしょう。(低めに手を出さないように)我慢できなかったね」 井口監督も実らない千賀対策に残念そうだった。 2000本安打へのカウントダウンへの足踏みから脱却しかけている内川が4回に2試合連続となる決勝アーチ。マルチ安打で「Xデー」まで残り4安打とした。共に率の悪かった松田もアベックアーチ。松田も2回の先制タイムリーを含むマルチ安打の2打点で千賀の今季1勝を後押しした。 ベンチは、内川に大谷翔平で有名になったメジャー流の「サイレント・トリートメント」の無視儀式。内川は、ベンチに腰を下ろしてから、ようやくハイタッチの嵐で歓迎された。 「たぶん(発案者は)川島慶三だと思いますが、“俺を誰も祝福してくれない?と一瞬、寂しい気持ちに(笑)。それだけ心配をかけていた。申し訳ない気持ちになりました」とは内川の談。 松田にもベンチ前の出迎えは一切なかったため、珍しく一人「熱男!」の雄叫びとなった。その直後に、こちらも、ベンチ内でハイタッチの祝福を受けた。 「苦しんでいるのがわかっているから、みんなが元気を出そうと考えたんじゃないか」 工藤監督も、そうベンチで笑っていたが、打線が活気づき、チームにまとまりが戻ってきた証拠である。 「もう一度、開幕のつもりで」とマウンドに上がった開幕投手の千賀が、1か月遅れで今季初勝利を手にして、不振だったチームの主軸2人にも当たりが戻ってきた。 「まだまだ修正点も多い。久しぶりで疲れたけれど、しっかりと準備をして次は初回からバランスよく投げたい」と、ローテーに復帰してきたエースはハキハキした声で“次”を語る。 これで貯金「2」。サファテの離脱など、ネガティブなニュースばかりに包まれていたソフトバンクに、ようやくトップを独走している西武を追撃するための役者が揃ってきた。