【ネタバレあり】『デッドプール&ウルヴァリン』は“ファン待望”の快作に 夢の共闘も実現
アメコミ映画ファンの気持ちに応えた快作!
※もう一度警告します。ここから先は本当にネタバレ全開です。 『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は、今までスパイダーマン映画が好きで本当に良かったと思わせてくれました。そしてこの『デッドプール&ウルヴァリン』は歴代X-MEN映画、そして20世紀フォックス時代のマーベル映画への愛に満ちた作品です。 先にも書いたMCUと20世紀版のマーベル映画の混在と、20世紀フォックスがディズニー(マーベルの親会社)に買収される、という“大人の事情”を逆手にとり、それをマルチバース×第4の壁の突破(デッドプールが、自分は物語の主人公であると知っていて観客に話しかけてくる)という組み合わせで茶化し、そして楽しませてくれます。 ストーリーは、デッドプール(ライアン・レイノルズ)が狂ったTVAのエージェントであるパラドックス(マシュー・マクファディン)のとんでもない計画から自分の世界を救うために、別のバースにいるウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)に助けを求める。しかし、このウルヴァリンは全バースにいるウルヴァリンの中で一番ダメな奴(しくじりウルヴァリン)だった。そうこうしているうちに2人は、TVAによって「虚無空間」にとばされる。この虚無空間はさまざまなバースのトラブルメーカーが追放される“時の果て”であり、荒野のような場所。しかしこの世界には恐るべき支配者がいた。それはなんと、プロフェッサーXの邪悪な双子の妹、カサンドラ・ノヴァ(エマ・コリン)だった。かくしてデッドプールとウルヴァリンはこの世界で知り合った訳ありヒーローたちと手を組んでカサンドラ・ノヴァの軍団と戦う、というものです。このカサンドラ・ノヴァの手下たちの多くが歴代X-MEN映画のヴィランたちであり、そしてデッドプールとウルヴァリンが出会うヒーローたちが、MCU以前のマーベル映画のヒーローたちなのです。 登場するのは、20世紀フォックス版『デアデビル』『エレクトラ』のジェニファー・ガーナー演じるエレクトラ、なんとニュー・ライン・シネマ版『ブレイド』からウェズリー・スナイプス演じるブレイド、『LOGAN/ローガン』でダフネ・キーンが演じたローラ/X-23。そしてこれがビックリですが、チャニング・テイタム演じるミュータント、ガンビット。もともとテイタム主演で、このキャラが主人公のX-MENのスピンオフ映画が作られるはずだったのですが、途中で製作中止になったのです。大爆笑だったのは、クリス・エヴァンスがキャプテン・アメリカではなく、20世紀フォックス版の『ファンタスティック・フォー』のヒューマン・トーチ役で登場したことです。 つまり、MCUが主流になって忘れ去られてしまったこうしたマーベルの映画のキャラたちはいま虚無空間に追放されている、なんというファンの心に刺さる設定でしょうか。そう、『デッドプール&ウルヴァリン』は、非MCU映画のヒーローたちによる『アベンジャーズ/エンドゲーム』的面白さがあるわけです。ちなみにカサンドラ・ノヴァがすごく怖いんですが、とてもキュートでもあります。ちょっとファンになりました。 しかし、この映画はあくまでデッドプールとウルヴァリンの映画。この2人についてファンが「こういうのを映画で取り上げてほしかった!」というものがキチンと用意されています。まずはマルチバースを使って、ウルヴァリンのさまざまなヴァリアント(バージョン)が登場。もともとウルヴァリンはハルクのコミックでデビューした、コミックのウルヴァリンは小柄な男だった、というファンにとってはツボな設定が今度の映画ではちゃんと触れられています。ついにあのマスクもかぶりますからね! 一方デッドプールについても。レディ・デッドプール(クレジットを見たら、演じていたのはライアン・レイノルズの妻ブレイク・ライヴリーでした)をはじめとするさまざまなプールのヴァリアントが登場。このあたりは、『スパイダーマン:スパイダーバース』のアニメで多くのスパイダーマンが登場する楽しさに通じます。そして何よりもデッドプールとウルヴァリンのバイオレンスにしびれます。本作は笑えるシーンが多いですが、やはり戦う2人はカッコいいのです。 本作はマルチバースによりすぎて複雑になった昨今のアメコミ映画を笑い飛ばすコメディであり、MCU以外のマーベル映画へのラブレターであり、デッドプールとウルヴァリンのかけあいとアクションを楽しむ最高のバディムービーに仕上がりました。 さて本編で気になったのは、ではなぜあのパラドックスがデッドプールを取り込もうとしたかです。パラドックスは神聖時間軸(要はMCUの世界)だけを守ろうとしています。 つまり、パラドックスは今後の神聖時間軸の運命をかけた戦いにデッドプールが役立つと考えていたのではないか? それを裏付けるように、偶然にもTVAのモニターに映ってしまったソーとデッドプールの1シーン。つまりこれはアベンジャーズ映画第6弾『アベンジャーズ:シークレット・ウォーズ』で描かれる予定の大バトルにデッドプールを参加させたいからではないでしょうか? ここ妄想が膨らみますね! 何度も劇場でおお! と声をあげてしまった本作。大満足ですが、あまりに多くのネタがつっこまれていて何度も観たくなる作品です。デッドプールとウルヴァリン、そしてX-MENやかつてのマーベル映画のヒーローたちの参加でこれからのMCUはもっともっと面白くなるでしょう! ただ一つ心配なのは、ウルヴァリンのヴァリアントの1人を演じていたヘンリー・カヴィル。彼のMCU入りは噂されていましたが、まさかこれだけ?(笑) カヴィルがもっとMCUで活躍してくれることを信じています。
杉山すぴ豊