【解説】“見極める”首相発言に変化 永田町では「解散についてはウソついていい」言葉も 大義は…
1986年、当時の中曽根首相はそれまで解散を否定し続けながら、誰もが想定していなかったタイミングで衆議院を解散し、「死んだふり解散」と言われました。 その後、衆参同日のダブル選挙が行われ、自民党は衆議院で300議席以上と圧勝したのです。この時、中曽根首相は「こんなに勝てるとは思いませんでしたね」という言葉を残しています。 このように「解散」には与党内での求心力を高める効果と、野党に対してはけん制の効果があります。だからこそ、いつ解散するか分からない状態、「何を考えているか分からない首相」が一番怖いのです。 この効果を最大限活用するため、永田町では「ウソをついていい」とされているということです。
■野党は「内閣不信任案」を出す? 解散の大義は…
今回、「本当に解散するの?」「するならいつ?」ということが気になります。13日の岸田首相の発言を受けて、そわそわする議員も出てきています。 自民党幹部の1人は「(首相は)明らかに解散に前のめりになっているように見える」と話しています。野党のある幹部も、岸田首相の“笑み”について「岸田さんは楽しそうだなあ」とぼやいていました。首相の解散権を前に、どうすることもできないというようでした。 岸田首相の胸の内が気になりますが、「とにかく慎重」で「口がかたい」です。カメラの回っていないオフのリラックスした場所でも肝心なことは絶対言わないといい、今回も最後まで、決断内容を簡単には口外しないとみられます。 解散のポイントになりそうなのが、野党が提出しようとしている「内閣不信任案」です。これは野党側の「切り札」で、国会の会期末に「自分たちは今の政権を認めない」とアピールするために提出するのが恒例となっています。 首相にとっては野党に「NO」を突きつけられたことになるので、返す刀で「国民に信を問いましょう」と、不信任案が「解散の大義になる」とされています。 そのため今、野党の中でも、不信任案に関する意見が割れています。立憲民主党が内閣不信任案を出すのは、「16日か来週19日」という見方が出ています。そして、首相周辺は「不信任案が出れば、首相は解散する」との観測を口にしています。 一方で、もし解散をするのであれば、なぜ今なのでしょうか。 今週とりまとめた少子化対策の是非を問うという意味もあるのではないでしょうか。ただ、なんといっても、「今なら勝てる」との思いが岸田首相にはあるとみられます。 G7広島サミットで各国首脳たちと原爆資料館を視察したり、ゼレンスキー大統領の訪日を実現したりしたことで、内閣支持率は大幅に上昇しました。 ただ一方で、マイナス要素もあります。岸田首相の元秘書官である息子の翔太郎氏が首相公邸で不適切な行動をして、問題になりました。また、マイナンバーカードで保険証や銀行口座などに別人の情報がひも付けられていたといった問題では、国民から大きな批判や不安の声が上がっています。 こうした中で、「本当に解散するのか」と最後まで緊迫した駆け引きが行われているという状況です。 ◇ 衆議院解散後の総選挙には、私たちの税金が使われます。また、今は4年の任期の半分にも満たないタイミングです。解散をめぐる動きが、「国民の関係のない政治家のゲーム」と思われないように、納得感のある解散理由、大義の説明が必要になってきます。 (2023年6月14日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)