悩ましい公的年金の受取開始時期「繰り下げたほうがいい人」「繰り下げないほうがいい人」【経済評論家が解説】
「公的年金は頼りにならない」…近年ではそんな声がしきりに聞こえてくるようになり、また、公的年金を軽視して、保険料の支払いを無視する人もいるようです。しかし、公的年金は長生きにもインフレにも対応する、ありがたい制度なのです。経済評論家の塚崎公義氏が解説します。 年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
「公的年金」は、老後資金の最重要な柱のひとつ
政府が投資を推奨しているいま、「老後資金が足りないから投資で増やそう」と考える人も多いと思います。しかし、投資で増やす前にやるべきことは多数あります。働いて収入を増やすこと、生活を見直して無駄な費用を削ること、老後資金の重要な柱である公的年金を大事にすること…などです。 公的年金は老後資金の最重要な柱のひとつであるのみならず、老後資金の最大のリスクである「長生きしている間にインフレが来て老後資金が枯渇してしまう」ことへの備えとしても大変頼もしい存在です。どんなに長生きをしても払ってもらえますし、インフレが来れば原則としてその分だけ受取額が増えるからです。 「公的年金を大事にする」には、自営業者等は年金保険料をしっかり払うことです。未払いがあると老後に受け取れる年金額が減ってしまいますから。 サラリーマン(男女を問わず、公務員等を含む。以下同様)は年金保険料が給料天引きですから、未払いは考えにくいですが、定年後も働いて年金保険料を払い続けること、専業主婦(主夫を含む、以下同様)もパート等で働いて収入を得るとともに、厚生年金に加入できる働き方を選択すること、などを心がけるとよいでしょう。
基本、老後の年金は「繰下げ受給で充実させる」のがお勧め
上記に加えて、本稿では「年金の受取開始時期を遅らせることで、毎月の年金受取額を増やす」ことを検討すべきだと考えます。公的年金は65歳から受け取り始めるのが一般的ですが、受取開始時期は60歳と75歳の間で選べます。当然、早くから受け取り始めれば毎月の支給額は少なくなりますし、待ってから受け取れば毎月の受取額は増額されます。 目処としては、5年間待って70歳から受け取ると、毎月の支給額が42%増えますので、自営業者夫婦だと月額13万円強が18万円強に増え、標準的なサラリーマン夫婦だと月額22万円が31万円強に増えるというイメージです。 75歳まで待てば毎月の受取額が84%増えますので、70歳時点で健康で長生きする自信があれば、そして年金を受け取らなくても生活できるだけの蓄えがあれば、もう少し待ってみるという選択肢も検討してみましょう。