日本は「お気に入りの国」だけど…世界の投資家ジム・ロジャーズが「日本株をすべて手放した」と明かすワケ
なぜ日本経済はいつまでも良くならないのか。投資家のジム・ロジャーズさんは「日銀と日本政府は策を講じているが、成果が出ていない。それは金融緩和や経済政策そのものが間違っているからだ」という――。(第1回) 【図表】投資目的の貸家の着工数が増えている ※本稿は、ジム・ロジャーズ(著)、花輪陽子(翻訳)、アレックス・南レッドヘッド(翻訳)『「日銀」が日本を滅ぼす』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。 ■借金に追いかけられ、足を引っ張られている 日本は今、1300兆円近い負債、借金を抱えている。内訳は、中央政府である国が国債の発行により生じた約157兆円。残りは、政府短期証券、借入金によるものだ。繰り返し述べてきたように、国債は日銀がお金を刷って購入している。つまり日銀は、政府が借金を背負うのを手伝っている、とも言える。 債務が増えれば当然、債務に関する問題が増える。中央政府が問題を抱えた中で、仮に地方自治体が稼いだとしても、本丸の政府が多額の借金を背負っていては、本来のスピードで国が成長することはできない。多額の借金を抱えながら早く走ることは、難しいからだ。 日本人は勤勉で有能だから、借金がなければ非常に速く走れるだろう。しかし、今は借金に追いかけられ、足を引っ張られている状態と言える。このような状態で、経済成長に転じることは不可能だ。 金融緩和により、確かに少しの間は景気が回復したかもしれない。しかし、長期的な視点に立てば、日本の負債を膨大に膨らませ、経済の悪化を導いたと、私は考えている。 一方で、政治家や経済評論家と呼ばれる人たちの中には、債務残高は増大しているものの、比例して純資産も増大しているので問題はない、と論じる人もいる。確かに景気が良いとき、日本であればバブル経済期などでは、借り入れを増やすために負債が増える、意図的に増やす場合もある。 ■「国民の資産で債務返済」は正気の沙汰ではない しかし、そのような人たちに言いたい。資産が暴落したときは、どうなるのか。資産価値が下がっても、同じことが言えるのか。実際、バブル崩壊後に日本経済がどん底に落ちたように、同じ轍(てつ)を日本は歩むのか、と。 もう一つ、これも同じく政治家や識者と呼ばれる人たちの中には、確かに債務残高は大きいが、借入先は日本国民であるから、結果として日本人が巨額の資産を持っている、との論調も聞かれる。 このような考えも間違っている。国民の資産を負債返却に当てるのは、正気の沙汰ではないからだ。しかし、現にそれが行われているのが、今の日本でもある。国民の資産を税金として集め、国の債務返済に充てているからだ。 日本は今、経済が停滞している緊急事態であるから国民一人ひとりが国債を買って、国を守りましょう――、私から言わせると政府がよく使うプロパガンダ、国民をだますための常套手段にしか見えない。 ただし国が抱える負債、借金は、日本だけの問題ではない。たとえばアメリカは、世界最大の債務国であり、他国と比べても断トツに多い。トップがアメリカ、イギリス、フランス、ドイツと続き、その後に日本という順である。