なぜ人は無意識に「肘をつく」のか? マナー違反だけじゃない…顔のたるみ、腰痛…肘をつくことがもたらす3つの悪影響
腹圧の低下で無意識に肘をついてしまう…
腹圧とは、腹腔内部にかかる圧力のことです。 腹腔は横隔膜から骨盤までの間で主に消化器などの内臓が集まっている空間です。その内部にかかる圧力のことを腹腔内圧と呼び、横隔膜、腹横筋、多裂筋、骨盤底筋などの筋肉が支えています。 腹圧が高いと体幹が安定し、姿勢をキープできますが、腹圧が低下すると、体幹を安定させるのが難しくなり、肘をついて左右のバランスをとったり、肘に寄りかかって重心を支えたりしようとしてしまうのです。 腹圧は、立って正しい姿勢を保とうとすると自然に高まるのですが、楽な姿勢でいたい、長時間のデスクワークで姿勢を保てないなどが原因で、低下ぎみになります。 また、腹圧は横隔膜、腹横筋、腹斜筋、多裂筋、骨盤底筋などのインナーマッスルが支えるため、なかなかふだんの生活で鍛えることが難しいというのも原因の一つなのです。 今回、腹圧を高めるために着目するのは「腹斜筋」という筋肉です。 「腹斜筋」は体をねじったり、丸める動きを行ったりするとき働く筋肉です。 とくに「内腹斜筋」は骨盤と腰の筋膜から肋骨の下部とお腹の膜についている筋肉で、 両方の「内腹斜筋」が同時に働くと体を曲げ、片方だけが働くと体を横に倒す働きがあり、腹腔内圧を高めてくれます。 この「腹斜筋」が筋力低下を起こしてくると、骨盤が前に倒れすぎて反り腰になったり、背骨が左右にずれたりしやすくなります。 これが長期間継続されると、腰椎の椎間板に過度な負荷がかかったり、腰周囲の神経や血管が圧迫されやすくなったりしまうのです。 「腹斜筋」の筋肉がしっかり使えてくると、腰椎や骨盤の位置を正しく使うことができ、肘で体を支えなくてもよくなり、姿勢の改善につながりやすくなります。
自宅でできる腹斜筋の鍛え方
正しい姿勢をキープし、さまざまな体の痛みや不調を改善のためにも、エクササイズで腹圧を保てるようにしましょう。 腹圧を鍛えるトレーニングとして、横隔膜を呼吸によって動かす、プランクなどで腹筋を鍛えるなど、さまざまな方法があります。 しかし、多くの患者さんを診ていると、なかなかハードで続かないようです。 そこで今回は道具を使わずに簡単に出来て、しかも効果の高いエクササイズを2つご紹介します。 これは等尺性収縮(とうしゃくせいしゅうしゅく)といってエクササイズを行ってもケガをしにくい運動になっていますし、トレーニングマットを広げたり、スペースをとったりする必要がないので、いつでもどこでもできるはずです。 では、一緒にやっていきましょう。 エクササイズ1(腹斜筋) 1 両足の裏を床面につけ、姿勢を正して座ります。 2 いつも肘をついている方の反対の手を90度、外に開きます。 3 その姿勢から、外側に腕を伸ばしていきます。(側方リーチ) (外側にある物を取るようなイメージでできる限り遠くに腕を伸ばしてください) 4 そうすると、いつも肘をついているほうの骨盤が浮いてきて、 腹斜筋がしっかり働いてきます。 5 その状態を5秒間キープしましょう。 6 ゆっくり元に姿勢に戻します。 慣れてくれば、足を浮かせた状態で同様にエクササイズを行っていただけると、さらに効果的に腹斜筋を働かせることができ、腹圧を高めることができます。 エクササイズ2(腹圧アップ) 1 両足を床面につけた状態で姿勢を正して座ります。 2 その状態からお腹をできる限りぐっ~と凹ましていきます。 そうすると、腹斜筋をはじめ腹横筋が働いてきます。 3 この状態を5~10秒キープします。 4 元の状態に戻します。 これらのエクササイズを1日、3~5回ほど繰り返してみてください。 このエクササイズを通して、日常生活では使えていない「腹斜筋」や「腹横筋」をしっかり働かせることができると、腹圧を高めることができます。 仕事の合間でもできると思うので、隙間時間やトイレに立った後にやってみるなど習慣化すると、自然に姿勢も改善していくでしょう。 また、腹圧を高めることによって、中高年の女性の悩みに多い腹圧性失禁の予防にもなります。 肘をつくポーズは、側弯症、下腹が出る、お尻が下がる、顔のたるみ、腰痛に繋がるなどほとんどいいことはなし。無意識にしているようなら、腹圧を高めて正しい姿勢をキープするようにしましょう。 無意識に肘をついてしまっていると思ったときに、このエクササイズを行うことで、ぜひ歪みのないキレイな姿勢を作っていただければと思います。 取材・文/百田なつき