8Kテレビは普及するのか?
8Kテレビの実用化に向けて
日本の総務省が2014年9月に公開した「4K・8Kロードマップに関するフォローアップ会合 中間報告」によれば、4K試験放送(最大3チャンネル)と8K試験放送(1チャンネル)を2016年に、4K/8Kの有料放送を2018年に開始するロードマップが用意されています。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを4K/8Kで楽しめる環境を整備することが、当面の目標です。 4Kテレビすら普及初期の段階なのに8Kテレビなんて、という声が聞こえてきそうですが、技術的には実用化可能な段階にあります。放送局側の設備投資をどう進めるか、コピープロテクトなど運用ルールをどう決めるか、といった今後詰めるべき項目もありますが、ロードマップと技術仕様が固まっていることから、8Kテレビに向けた環境づくりは着々と進行中です。 実用化前のため予想ですが、8Kテレビを家庭で視聴するには、8K解像度に対応した受像機(ハードウェアとしてのテレビ)と8K放送に対応したチューナーが必要になると考えられます。空き帯域の事情から地上波を利用した放送は現在のところ実用段階にないため、伝送路も確保する必要があります。 8Kコンテンツの伝送路には、2016年以降の実用化が見込まれる110度通信衛星(CS)と、2015年3月の衛星セーフティーネット終了後の空き周波数帯域(BS)、ケーブルテレビ網とインターネットが利用される予定です。8K映像のデータ圧縮技術には、現在2Kで主流のH.264/AVCに比べ2倍以上の圧縮効率を持つ「H.265/HEVC」が存在するほか、8K映像を「4K映像+差分情報」で構成する技術も登場しており、単純に2Kの16倍、4Kの4倍のデータ量とはならないことがポイントです。 8Kテレビを支えるハードウェアの市販品は存在しないものの、毎年5月に開催される「NHK技研公開」にはNHKと共同開発を進めるメーカーの試作機が展示され、その完成度を見ることができます。2014年5月の技研公開では、8K解像度の表示装置はもちろんのこと、22.2ch音響システムを体感することができました。撮影機材も、有効画素数7,680×4,320/12ビット階調/120Hz/広色域という8Kの要求基準をすべて満たすビデオカメラのほか、1億3,300万画素のイメージセンサーも展示されていました。 気になる値段ですが、4Kテレビを上回る価格帯が予想されるものの、2020年には意外に手の届くレベルで登場する可能性があります。冒頭に挙げた「2015インターナショナルCES」では、本邦メーカーのシャープが"8K相当"の解像度を持つ4Kテレビを展示していました。かんたんにいえば、シャープ独自の4原色技術を応用して2Kパネルながら4K相当の画質を得られる「AQUOS クアトロン プロ」の4Kパネル版で、4Kテレビの価格で"8K"を実現することが可能です。もっとも、液晶パネルの大型化と高精細化が進行していることもあり、疑似ではない8Kパネル搭載機が現在の4Kテレビの価格帯に落ち着く日もそう遠いことではないかもしれません。 (執筆=海上 忍)