<ブラックファミリア>福田浩之Pが明かす制作秘話と裏話 板谷由夏の表情に隠された意外な真実「『何お前が泣いてんねん!』っていう顔です(笑)」
板谷由夏が連続ドラマ初主演を務めるプラチナイト木曜ドラマ「ブラックファミリア~新堂家の復讐~」(毎週木曜夜11:59-0:54、日本テレビ系/Huluでも配信中)が現在放送中。同作は、「ブラックスキャンダル」「ブラックリベンジ」に続いて読売テレビが制作する“ブラック”シリーズの第3弾となる、完全オリジナルの復讐(ふくしゅう)ミステリー。謎の死を遂げた女子高生の家族が、愛する娘の死の真相を追うため、実業家一家やその関係者にさまざまな姿になりすまして近づき、意外な真実を暴いていく。 【写真】塩野瑛久“倫太郎”に詰め寄られる渡邉理佐“沙奈” ■“なりすまし”一家による復讐ミステリー 主人公の専業主婦・新堂一葉を演じる板谷の他、夫・新堂航輔役の山中崇、弟・五十嵐優磨役の森崎ウィン、長女・新堂沙奈役の渡邉理佐、次女・新堂梨里杏役の星乃夢奈が出演中。また、実業家一家である早乙女家の主・早乙女秋生役の平山祐介、妻・早乙女麗美役の筒井真理子、長男・早乙女倫太郎役の塩野瑛久、長女・早乙女葵役の瀧七海、父・早乙女泰造役の小野武彦らが脇を固める。 WEBザテレビジョンでは、同作の企画およびプロデューサーを務める福田浩之氏にインタビューを実施。視聴者からの反響への思いやキャスト陣の魅力、撮影裏話などについて話を聞いた。 ■「役者の声によって設定や展開がかなり変わっている」 ――“ブラック”シリーズの第3弾となりました。制作秘話があれば教えてください。 僕は自分のオリジナル企画の作品では、基本的にクランクイン時点では最終話まで作らないようにしています。というのも、実際にクランクインしてそこに役者の気持ちが乗ると、新たな感情が生まれたりしますよね。 なので、今作も実は役者の声によって設定や展開がかなり変わっているんです。例えば、当初は板谷さん演じる一葉の復讐によって新堂家が崩壊していく展開も考えていたんです。しかし、撮影現場で新堂家の役者陣が実際に本当にみんな支え合ってお芝居をしていて、板谷さんも「私はこの家族がいるおかげで復讐できる」とずっと語られていて。そんな板谷さんの言葉や新堂家の姿がすごくすてきで、そこから後半の展開を変えたりしました。 でもそれはオリジナル作品だからこそできることで、僕自身も手掛ける以上は逆算で演じてほしくないので、撮影が始まった時点でそれぞれの気持ちの変化をちゃんと受け止めて、現在進行形で臨機応変にキャラクターたちを動かしていこうと思っています。 山中さんはある重要なシーンの撮影を終えた際、「この家族と離れるのがつらい」と泣いてくださって。やっぱり演じていると、それくらい家族の絆が強くなっていくんですよね。 ――放送開始からの反響はどのように感じていらっしゃいますか? 完全オリジナルでゼロから企画し、それぞれのキャラクターを生み出したドラマなので、とにかく愛されてほしいなと思って作ってきました。今回特に、10月5日に放送された第1話はTVerで128万回再生を突破し、同枠の一週間見逃し再生数の最高を更新したり、第5話時点で全話100万回再生を超えたりしていることもあり、とてもうれしく思います。本当に作品を我が子のように思っているので、皆さんからかわいがってもらえてうれしいです。 僕は常々、企画を考える際に「こういうのがウケるだろう」といった視点では考えず、自分が「今はこういうのが好き」ということをきっかけに企画・制作しています。基本的にはスキャンダルやゴシップが好きな人間なので、そういうものを自分の中でエンターテインメントに落とし込んで作ったものが世間から受け入れられているというのは、とても感慨深いです。 ■新堂家は「ファミリー感がすごく強い」 ――以前、「『運命じゃない人』という映画を観て一目ぼれをした板谷由夏さんに主演をお願い出来るなんて、運命」と仰っていました。撮影が進むにつれて改めて感じた板谷さんの魅力を教えてください。 今回は、タイトルに“ファミリア”とあるとおり家族の復讐劇で、娘が亡くなったがために普通のお母さんが復讐という狂気に走っていくストーリーです。実際板谷さんにもお子さんがいらっしゃり、すてきな母親であるというところが主人公の一葉と通じています。板谷さんはドラマ初主演ということですが、現場のキャスト・スタッフのチームの中においても母親のようなポジションで、周りを優しく包み込んでくださっています。 一葉には本当に不幸なことばかりが起きるので、演じるのはかなり大変だと思うのですが、現場のスタッフで元気がない様子の人がいたら声を掛けてくださるなど、大変すてきな座長です。初主演で板谷さん自身が一番大変なはずなのに、まずみんなに楽しんでもらいたいという思いがあるようで、キャスト・スタッフ全員のことを本当に家族のように思ってくださっているのが伝わるし、そこに助けてもらっています。みんなのファミリー感がすごく強い現場です。 ――山中崇さんの印象をお聞かせください。 僕と山中さんは戦友に近い感じで、本当に24時間台本のことについて話をするような仲なんですよね。他の役者さんでも、せりふやキャラクター性について話し合う方はいるのですが、山中さんはトータルで、「こうした方がこのドラマ全体が盛り上がる」「この展開よりもこうした方がいい」と、一緒に物語を面白くしようと考えてくれるので、すごくありがたいです。常にフラットにディスカッションをしています。とても熱い人です。 ――森崎ウィンさんの印象をお聞かせください。 森崎さんは、自分の役をどう楽しむかということにものすごく特化していて、自分が演じる役のことを誰よりも好きになってくれる人です。どう演じたら優磨という役をより楽しめるかというアプローチが、結果的にキャラクターの魅力にもつながっているんですよね。あの演技は、見ていて楽しいです。韓国語も自主的に覚えてきて、アドリブで喋ったりされるんですよ。 僕は、ご自身が演じるキャラクターのことを愛しているからこそ出る役者のアイデアは、基本的に採用しようと思っています。特に今作はオリジナル作品なので、先ほど言ったように“自分が生みの親”という観点で言うと、そういった声に耳を傾けることが“親離れ”だと思っているんですよね。最終的に自分の手から離れた方がそのドラマが面白くなることも分かっていて。 森崎さんは結構早いうちに“親離れ”してくれたので、僕の知らない優磨を見ている感じで、正直半分は寂しいですが、うれしい気持ちが大きいです。 ――渡邉理佐さんの印象をお聞かせください。 渡邉さんは、お会いするのが初めてでしたが、すごく心が強い方だなと思いました。沙奈という役もすごくつらい役で、襲われたり、闇営業の悪い大人のところに潜入したりと演じる上で結構しんどいはずなのですが、その苦労を現場で絶対顔に出さないんですよ。それは、アイドル時代の経験があるからかもしれませんが、弱音を吐くことも絶対ないですし、何でも吸収したいというガッツを感じます。肝が据わっているなと思います。 ――星乃夢奈さんの印象をお聞かせください。 星乃さんは、本当に明るい子で、すごくかわいらしいです。クランクインのときから新堂家の皆さんのことを「お父さん!お母さん!お姉ちゃん!」と呼んでいて、人懐こくて。「この子があんな不幸な死を遂げたなら、それは復讐するわ」と思えるくらい、とってもいい子なんですよ。なので、梨里杏が星乃さんで本当に良かったなと思います。 新堂家の回想シーンも、やっぱり星乃さんのおかげでみんなが自然と笑顔になるんですよね。星乃さんがこの家族の一番中心にいて、みんなに愛されているというのが画面からすごく伝わるんです。現場でもみんなに愛されている子です。 ■「“似た者夫婦だな”とほほ笑ましい気持ちに」 ――早乙女家の面々もとても個性的です。秋生が鍛えているシーンや、麗美がフラメンコを踊るシーンなど要所にコミカルな演出がありますが、何か狙いはありますか? アメリカのドラマや映画なんかがそうですが、悪役のお金持ちってちょっとネジが外れていて癖の強い感じがありますよね。それを演出したかったんです。社長という立場的に秋生はとにかくマッチョがいいし、麗美に関しては「この人にはどう考えても勝てない…」といった圧倒的に癖の強いキャラクターにしたくて。平山さんは元々鍛えていらっしゃる方でしたし、筒井さんはフラメンコを踊れると言ってくださったので、その案を採用しました。 また、お二人は演じながら「お前がそうくるんだったら俺はこうする」「それだったら私も」と、どんどん勝手に盛り上がっていくんですよ(笑)。設定では悪役ですが、“似た者夫婦だな”とほほ笑ましい気持ちになります。 ――長妻怜央さん演じる伊志嶺和也は暴露系配信者・Mr.サルベージとしても暗躍し、現代のネットリテラシーへ警鐘を鳴らすキーパーソンであるようにも感じます。この役の注目ポイントを教えてください。 確かに、今の時代を一番切り取っている役だと思います。今作は、いつの時代でも通用するものすごく根本的な復讐劇ではあるのですが、このMr.サルベージというキャラクターに関しては、今だからこそどうしても入れたかったという思いがあります。イケメン俳優の裏にパトロン的な女性がいて、そこに深い闇がある。時代をちゃんと切り取りながらも、そういった闇を描くことは、今このドラマをやる意味としても一番大きな役割だと思います。 また、この役を長妻さんにお願いして正解だったと思ったのは、ご本人がすごく明るく天真爛漫で少しもあざとさがない方だったので、設定をさらに深くする必要があったことでした。麗美さんとも本当はもっと打算的な関係にする予定だったのですが、ご本人があまりにもそういう人じゃないから、ここにもう一つ何か設定を乗せた方がいいだろうと話を変更しました。これは、結果的に長妻さんだから叶ったことです。 ■板谷由夏が思わずブチギレ!?「泣きたいのは私!」 ――撮影現場の裏話や面白エピソードがあればお聞かせください。 僕、第5話の、航輔がソファの下に挟まって一葉が秋生に迫られているのを見ているシーンがすごく好きで。秋生が部屋を出ていった後、航輔がやっとソファの下から出てきて一葉と見つめ合う瞬間があるのですが、航輔がそこで涙を流したんですね。僕は、それは本当に純粋な気持ちだったのだろうと、すごく共感できたんです。 ですが、カットがかかった瞬間に板谷さんがブチギレてるんですよ(笑)。「泣きたいのは私!」って(笑)。そこにいた女性スタッフもみんな「なんでお前が泣くんだ!」となっていて。僕は山中さんの気持ちがすごく分かるから、二人して女性陣にすごく詰められまして…。なので、あのシーンの一葉の表情は、「何お前が泣いてんねん!」っていう顔です(笑)。 ――ミステリー要素を演出するために特にこだわっているポイントはどこですか? 今回、城定秀夫監督と一緒にやっていますが、基本的には「なんか怪しいぞ…」と予感させないように、あざとく見せないようにしています。昨今の考察ブームには反する形なのですが、「ここが考察ポイントですよ」というのを見せれば見せるほどあざとくなる気がしていて。これはやっぱり、TVerですぐに見返せるようになった影響もあると思います。 これまでの地上波だとリアルタイムの1回勝負なので、ミステリーだと特に、例えばSE(効果音)をつけるなど、多少あざとくせざるを得なかったと思うんですね。でも今作ではそういうのは極力減らして、まず人間ドラマを大前提として見せて、その中にミステリー要素が入っているという順番にしています。なので、“ミステリー要素にこだわりすぎていない”のがこだわりポイントです。 ――主題歌にあえて洋楽(オリヴィア・ロドリゴの「ヴァンパイア」)を採用したのにはどんな狙いがありますか? 自分の中に、「日本にはこんなオリジナルドラマがあるんだぞ」と、日本代表として作っている意識があって。なので、少しでも海外の方に触れてもらうきっかけを増やしたいという思いがまずあります。また、「ヴァンパイア」は失恋の曲ですが、あくまでも嫉妬心のような心理描写がメロディーとして伝わればいいというところで、採用しています。 ――最後に、最終回に向けた見どころと視聴者へのメッセージをお願いします。 女子高生が亡くなった死の真相を暴く話ではあるのですが、根本には復讐を遂げようとする新堂家の絆や葛藤があり、早乙女家の中にも複雑なドラマがあります。それぞれが最終的にどのような家族の形を見つけるのか、ぜひ見届けていただきたいと思います。