アジアプレス・石丸次郎大阪代表による北朝鮮の現状(全文2)経済制裁など
北朝鮮の核実験や「ミサイル」発射実験など、朝鮮半島情勢が不安定化する中、アジアプレスの大阪オフィス代表である石丸次郎氏が2日午後3時から、東京の外国特派員協会で記者会見した。 アジアプレスのサイトよると、石丸氏はこれまで、北朝鮮取材は3回、朝中国境地帯での取材は約75回を数え、800人を超す北朝鮮の人々へのインタビューを行ってきた。
核実験、ミサイル発射には「無関心」
石丸:いま、聞いていただいたのは、北部地域に住んでいる30代の女性です。それで、この人は私たちの取材協力者ではなくて、私たちの北の内部の取材協力者から紹介をしてもらった人です。 夫が国営企業に勤めています。本人は日常的にマーケットで商売をしている人です。生活のレベルで言うと中の上ぐらいな感じだと思います。この方を含めて、核実験以降10人ほどの人に話を聞きました。労働者、それから農民、それから家庭の主婦、元軍人、それから労働党の中堅幹部がいました。それで、核実験どうですか、ロケット発射どうですか、どう思いましたかっていう質問を皆さんにしたんですけれども、共通した答えは「無関心」でした。もう、そんなものどうでもいいという無関心が、一番共通した答えでした。 核実験は今回で4回目になりますね。1回目、2回目のときは何か大きな武器を持ったということで話題になっていたんですけれども、それにも慣れっこになったということがあると思います。それと金正日時代から、われわれが核兵器を持ったら大国になって経済は良くなるという宣伝をしてきましたけれども、実際には何も良くなったことがないということが、無関心の理由だと思います。むしろその核とかロケットの質問を私たちが繰り返しすることに対して、なんでそんなことをずっと聞くのかというような反応が多かったです。
北朝鮮の雰囲気は、恐怖が支配している
それから2つ目の反応に多かったのは、金正恩さんの不人気ですね。やはり若いために侮られている、非常になめられている雰囲気がまだまだ北朝鮮の中あるということを感じました。あの若造、ガキに何ができるんだというような言い方を、皆さんがしました。 それから3つ目は、共通しておっしゃったのが今の北朝鮮の中のムード、雰囲気についてですが、恐怖が支配しているという言い方を皆さん、よくしました。金正恩時代になって4年間、4年がたちましたけれどもその間にご存じのように非常にたくさんの高位級幹部が粛清をされました。地方でもなかなか報道はされていませんけれども、地方でも多くの幹部が粛清されたり、除去されたりしています。 核実験をやったあと、そしてロケット発射をやったあと、平壌からお決まりの映像が届けられます。それは核実験成功、ロケット発射を、成功を喜ぶ平壌市民の姿という映像でしたね。もちろんそれが演出されたものだということは、ここにいらっしゃってる皆さんは十分に理解されていると思います。しかしながら日本のメディアはじめ、韓国もそうだし、おそらく欧米のメディアもそうでしょうけれども、繰り返しその平壌市民の反応という映像を流します。あの映像のほとんどは朝鮮の国営テレビが撮影したもの。あるいは日本の共同通信、そしてAP通信の撮影したものです。 APと共同は平壌に支局があります。しかしながら特派員の常駐を認めてもらっていません、許されていません。撮影をしているのは基本的には北朝鮮のカメラマンです。ですから、北朝鮮国営テレビ、共同、APの、言ったら、金正恩さんが世界に見てほしい映像をわれわれはずっと見させられているということです。これはやっぱり非常に大きな問題があると思います。ずっとこういう映像ばっかり見させられていると、北朝鮮の人たちのことを洗脳されたロボットではないかとか、あるいは金正恩と一体化しているというふうに世界の人が誤解するのではないかと思います。