キングサーモン海面養殖試験開始 函館漁港いけすに幼魚を投入
函館市は19日、北大とともに進めているキングサーモン完全養殖技術研究事業で、函館漁港内に設置したいけすに人工授精で生まれたキングサーモン(マスノスケ)の幼魚約100匹を投入し、海面養殖試験を始めた。人工種苗を用いた海面養殖試験は国内初で、来年6月下旬の水揚げまで生育状況などを調べる。
国の地方大学・地域産業創生交付金を活用した「函館マリカルチャープロジェクト」の一環。同研究では当初、11月から大森浜沖での養殖試験を予定していたが、代替魚のサクラマスを用いて2022年から今年にかけ実施した試験中に金属製のいけすが破損。市は波の影響による金属疲労や金網の腐食が原因だとして、化学繊維のいけすに切り替えた上で、沖合に比べ波が穏やかな同漁港内での試験実施に切り替えた。 同日は、中間育成施設から活魚運搬車でキングサーモンの幼魚を漁港に運び、試験を委託する市漁協の関係者ら約10人が午前8時半ごろから作業。生きの良い魚をたも網ですくい、岸壁近くに設置した5メートル×5メートル×3メートルのいけすに慎重に投入した。 北大大学院水産科学研究院の藤本貴史教授によると、幼魚の大きさは平均800グラムで、大きいものは1キロまで成長。今後の試験では定期的にサンプリングし、体重、体長など成熟度合、肉質などを調べる。大森浜沖での海面養殖試験は来秋実施を目指している。 藤本教授は「試験前の肉質は脂も乗っていて、色味も良かった。ほかの養殖サーモンとの差別化が必要で、しっかり育てば良い魚になる」と手ごたえを感じていた。
函館新聞デジタル