「新築のトイレは本当に2つ必要か」問題に、気鋭の建築家が辛辣回答! トイレに不要なものはたくさんある!
---------- 人生でいちばん高価な買い物、マイホームをせっかく建てたのに、「こんなはずじゃなかった」と後悔する人があまりに多いのはなぜなのか? 気鋭の建築家・内山里江氏は言います。 「日本人が家づくりに失敗する最大の理由は、たとえば『家は南向きじゃなきゃダメ』とか『窓は大きいほうがいい』といった『間違った常識』によるものです。私は本書でそうした間違った常識をすべてひっくり返します」 内山氏の最新刊『家は南向きじゃなくていい』から、間違いだらけの家づくりをしないための方法を連載形式でお届けします。 ---------- マイホームのお風呂に夢を持ちすぎて失敗する日本人
トイレの話 汚れやすい場所はなるべくコンパクトに
トイレへのリクエストでよくあるのは「広くしたい」「トイレ内に手洗い場をつけてほしい」「1階と2階とにひとつずつつくってほしい」などです。 今住んでいる家のトイレが狭いと「掃除のときに便器が肌に触れて気持ち悪い」「体があちこちにぶつかる」などの理由で、新しいトイレに広さを求めるようになりやすいです。気持ちはわかります。 しかし、広いトイレは実は考えもので、トイレが広いと掃除すべき床面積が増えるのです。また、ときどきお目にかかることがありますが、壁の横幅にゆとりをもたせすぎた結果、便器とトイレットペーパーホルダーとの距離が離れすぎて、便器に座った状態でトイレットペーパーに手を伸ばしにくくなることがあります。1日に何度も使う場所ですから、不便になるのは避けたいものです。
家事負担を冷静に考えよう
「トイレ内に手洗い場をつけてほしい」「1階と2階とにひとつずつつくってほしい」も、ついリクエストしたくなる気持ちはわかりますが、慎重になったほうがいいというのが私の考えです。いわゆる「水まわり」ですので、こまめな掃除やお手入れが必要だからです。ただでさえ、トイレをはじめ、台所やお風呂、洗面所などの水まわりは放っておくとカビが生えたり臭くなったりするので、こまめな掃除が欠かせません。そこに加えて、トイレの数が増えたり、さらにはトイレの中の手洗い場までお手入れしなくてはいけなくなったりすることは、家事負担をどれだけ増やすことになるでしょうか。 水まわりの箇所が増えると、掃除をするためのスポンジや雑巾、洗剤といった備品もそれぞれの場所に必要になります。トイレが2つになれば、トイレットペーパーやサニタリー用品などのストックも2倍必要です。労力面もコスト面も大幅に負担が増えるのです。 家族の多いご家庭では1階と2階にそれぞれトイレを設置することが吉と出ることも、もちろんあります。しかし、将来的に2つあるトイレのうち片方しか使わなくなることで新たな問題が発生する可能性があります。実は、トイレは日常的に水を流さないと臭くなってしまうのです。どういうことかというと、排水パイプに常に水が溜まっていることで下水からにおいが上がってくることを防ぐ仕組みになっているのです。 これを「封水」というのですが、しばらくトイレを使わずにいると、水がなくなってにおいを止めることができなくなってしまうのです。「家の中がなんだか臭い、どうやらトイレから来ているらしい」と訴えるご家庭に確認すると、「封水切れ」を起こしているケースがほとんどです。 トイレを2つつくったからには、その家に住む限りはどちらのトイレも日常的に使う必要があることは覚えておいて損はありません。