最悪水草、静岡県内に襲来 外来種ナガエツルノゲイトウ 麻機遊水地、柿田川にも
観賞用の水草として持ち込まれ野生化したとされる南米原産の特定外来生物「ナガエツルノゲイトウ」が近年、静岡市葵区の麻機遊水地や清水町の柿田川など県内各地で確認され、周辺の絶滅危惧種の生態を脅かしている。行政や地元関係者の駆除活動で何とか拡大を食い止めているが、作業には多くの人員と経費が必要。農業や防災への悪影響も懸念されるため、関係者を悩ませている。 ナガエツルノゲイトウは数センチの茎の断片からも再生する強い繁殖力を持ち「地球上最悪の侵略的植物」とも呼ばれる。川面を覆うように広がり、水流を妨げる場合もある。重機や草刈り機で刈り取ると断片が流れて逆に生息地域を広げかねず、根絶のためには手作業での除去が中心となる。 ■「駆除追い付かない」関係者苦悩 麻機遊水地では初確認された2014年以来、県が絶滅危惧2類に指定するミズアオイや他の在来種への影響が懸念され市や県、保全団体などが駆除を続けてきた。作業は多くの人手が必要で、縦3メートル、横8メートル程度の駆除に20人がかりで半日かかる。豪雨などで遊水地沿いの巴川が増水するたびに侵入し、根絶に至っていない。麻機遊水地保全活用推進協議会の小池祥平さん(28)は「駆除が追い付かないのが現状」と嘆く。 国指定天然記念物の柿田川でも22年8月に確認された。県の絶滅危惧2類に指定されるミシマバイカモへの影響が懸念され、国土交通省沼津河川国道事務所が駆除している。竹内昭浩流域治水課長は「まだ根絶できていない。専門家や地元団体と話し合い、駆除方法を模索したい」と粘り強く取り組みを続ける。 昨年度の環境省の調査では、河津町でも生息が確認された。県自然保護課によると、今後さらに繁殖が加速すれば、下流に流れて水門が開かなくなったり、水田に侵入して稲の生育を阻害したりする恐れがあるという。県は、下流域への断片流出防止のため編み目の細かいフェンスの設置を呼びかけるなど、対策の周知に努める。 ■農業被害深刻化 県外でも対策 ナガエツルノゲイトウが繁殖して農業水利施設のポンプを詰まらせるなどの被害が深刻化している千葉県では、駆除・防御の円滑化を狙った2022年5月の外来生物法改正を踏まえて、多様な団体が駆除に参画できるよう補助制度の創設や駆除方法を説明するリーフレットの配布などを進めている。 ナガエツルノゲイトウの駆除に詳しい「エコロジー研究所」(神戸市)の丸井英幹代表(57)は農薬や重機を使って駆除しても一時的な効果しか得られないと指摘。遮光シートをかぶせ光合成を阻害し、数年間かけて根絶を目指す駆除に取り組む。丸井代表は「住民や行政、専門家が一体となり、同じ意識をもつことが不可欠」と訴える。 国立環境研究所によるとナガエツルノゲイトウは22年12月時点で25都府県で生息が確認されている。
静岡新聞社