<私の恩人>アキ、松本人志さんが自分を大きく変えてくれた!
ホンマにありがたいことではあるんですけど、当時は、家に帰ったら、毎日、同じ感じになるんです。自分で分かるんです。脳みそが疲れているといことが。肉体的にしんどいとか、粗相(そそう)をしたらアカンから気を遣うというのとも違うんです。純粋に、脳みそが疲れているんです。 というのは、松本さんとご一緒するようになって、ビフォーアフターやないですけど、お笑いに対する考え方がガラッと変わりました。それまでの僕は普通にご飯を食べたり、移動している時とかはアタマをオフにしていたんです。 だから、お笑いと向き合っているのは仕事中とか、ネタを考えている時とかになってくる。でも、松本さんは本当に、本当に24時間なんです。 例えば、ご飯に行っていても、ふと「アキ、このグラス、付き合いたてのカノジョやと思ってしゃべってや」と言わはるんです。そうなったらこっちは「は~、お前のこの冷えた感じ好きやぁ。この中の氷が溶けるまでの時間が恋の時間や。だから、できるだけ堅めの氷を入れて…」みたいなことを返す。そうしていたら、店員さんが注文した料理を持ってきてくださる。すると「今の店員さん、昔、何をしてたんやろうな?」と尋ねてくる。その店員さんが妙に筋肉質やったり、目線が鋭かったり、言葉にちょっと詰まったり…。 そういうことを瞬時に取り込んで、僕に聞いてくる。僕は「ロシアのスパイちゃいますかね」とか返すんですけど、ご自身の中ではしっかりとした答えができているんです。後輩にそれを振るということは。生きている全ての局面で、自分の中の発想を幾重にも膨らましている。この感覚が衝撃的でした。そら、おもしろいわと。ここでも大きく驚きました。
松本さんと一緒におらせてもらって、驚くことがたくさんあった。ということは、その度に、自分の中で大きな変化があったということ。今でも、こちらが松本さんに感じるのは「カッコええなぁ…」のままですけど、最初にお会いした頃の自分と今の自分を比べると、ホンマに変わったと思います。 10年で、これでもかとご飯もごちそうになりましたし、旅行も沖縄だ、海外だと連れて行ってもらいました。また、その旅行も僕が全部段取りを任せてもらっていたので、正直な話、どれだけお金がかかりまくっているか、よーく分かっています(笑)。だから、いや、だからということでもないんですけど、自分を変えてもらった恩返しがあるとするならば、とにかく売れ続けるしかないと思っています。 ■アキ 1969年8月22日生まれ。大阪府岸和田市出身。本名・荒木良明。京都の撮影所でスタントマンなどを経験した後、1992年にケンとお笑いコンビ「水玉れっぷう隊」を結成。同期は「メッセンジャー」、桂三度ら。「ダウンタウン」らを輩出した吉本興業の劇場「心斎橋筋2丁目劇場」きっての人気者として活動し、拠点を東京に移す。2014年からは大阪に戻り、吉本新喜劇に所属。「アキが出る公演はチケットが売れる」という評判を得るようになる。得意ギャグは“いいよぉ~”。7月1、2日には大阪・YES THEATERでイベント「涙活プロジェクト~橋本昌人ホッとライブfeat.水玉れっぷう隊アキ~」を開催する。 ■中西正男(なかにし・まさお) 1974年、大阪府生まれ。大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。大阪報道部で芸能担当記者となり、演芸、宝塚歌劇団などを取材。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、芸能ジャーナリストに転身。現在、関西の人気番組「おはよう朝日です」などに出演中。