高台に住民移住させ、海沿い居住禁止目指したインドネシア政府…それでも海岸近くに住む男性「生きていけなくなる」
約23万人が犠牲になった2004年のインド洋大津波から26日で20年となる。インドネシア・スマトラ島北部アチェ州の州都バンダアチェでは6万人以上の死者・行方不明者が出た。特に壊滅的な被害を受けたウレレ地区には、被災した地元の漁師たちが次々に戻っていた。 【図】震源地はここだった
海岸から50メートルの場所に家を構える漁師、イルファンディさん(39)は当時、地震に伴い発生した津波で両親と6人のきょうだいを亡くした。周辺の家々はほぼ流され、モスク(イスラム教礼拝所)だけが残った。約3年後に戻ってきた。マグロ漁で生計を立て、妻や娘らを養うためだ。「津波を恐れて海から離れれば生きていけなくなる」
そんな漁師はイルファンディさんに限らない。インドネシア政府は高台に住民を移住させて海沿いを居住禁止区域にしようとした。しかし、海岸近くに立つモスクの周りには、青や緑色などにペイントされた住宅が100軒ほど立ち並んでいた。世界各国の支援団体が住民の声に応える形で建設した復興住宅だ。(バンダアチェ 作田総輝)