「生成AIのポテンシャルはクラウド上でこそ最大限発揮できる」--AWS Summit Japan 2024
Amazon Bedrockを利用する企業事例では、ソニーグループの小寺氏が登壇した。 同社ではこれまで、カメラのオートフォーカス機能やゲームのAIエージェント、IDや決裁の不正検知にAIを活用してきた。小寺氏は「これらのAI技術に加え、お客さまやクリエイターにさらなる価値を提供するために生成AIの活用が必要だと考え、生成AIの展開を進めている」という。 また、ビジネスの成長や会社における組織機能の生産性・効率性の向上に向けて、社内の多様な組織・機能において生成AIの活用を広げている。具体的には、ソニーグループにおいて従業員が容易にアクセスできる社内専用の生成AIツール「Enterprise LLM」を提供している。 同ツールでは、生成AIのリスクとオポチュニティーを全ての従業員が体験を通じて理解すること、そしてビジネス検証(PoC)を加速し、効果的かつ効率的に生成AIを使い倒すことを目的にしている。既に日本と米国において1万8000人以上の従業員が生成AIの知識と技術に触れ、体験をしているという。同ツールの活用により、既存の業務プロセスを新しい発想で構築する事例やビジネスでの活用事例も生まれている。 同社の生成AI基盤では、ユースケースに応じて多様なLLMを適材適所で使い分ける戦略を採っている。小寺氏は「その中でもAWSは重要なパートナーであり、Bedrockはそういった複数のLLMを活用する当社の思想とマッチしている」と語る。今後もソニーグループでは、データ活用やAI技術を駆使し、顧客とクリエイターとのエンゲージメントを強化していく構えだ。 3層目のアプリケーションでは、生成AI搭載アシスタント「Amazon Q」がユーザーの生産性を向上させる。Amazon Qは、「Amazon Q Business」「Amazon Q Developer」「Amazon Q in QuickSight」「Amazon Q in Connect」と用途別に提供しており、今回、Amazon Q Businessが東京リージョンでリリースされることが決定した。2024年中を予定しているという。 Amazon Q Businessは、企業データと連携できる生成AIアシスタントで、40以上のビジネスツールと容易に接続し、社内データや規定に基づく適切な回答を行う。 また新たに、「AWS生成AI実用化推進プログラム」の提供も発表した。同プログラムでは、「カスタムモデルの開発や改良に取り組む企業」または「生成AIでプロダクトのイノベーションに挑戦する企業」を対象に展開するという。 前者に対しては、分散学習環境や推論環境の構築、データセット整備、実用化・協業支援を行い、後者には製品戦略の策定からモデル選定・カスタマイズ、データ整備、システム化、最適化までを支援するとしている。 支援プログラムとして、「AWS ITトランスフォーメーション(ITX)パッケージ ファミリー」のアップデートも発表した。「ITX for Cloud Native」では、生成AIの土台となるデータ活用支援を追加。ほかにも新たなパッケージとして、公共領域のシステムモダナイゼーションを支援する「ITX for PS」を提供するという。 恒松氏は最後に「AWSは長期的な目線でお客さまの課題を解決することに注力し、ご利用いただく皆さまに支えられ、これまで歩んでくることができた。そして、これからも皆さまが最高の速度でイノベーションと試行錯誤を繰り返すことができるようにサービスを提供し、価値創造・社会課題に取り組んでいくことに貢献する」と締めくくった。