新千円札・北里柴三郎のオペラが6月に初演 尾身茂氏も合唱団で演技を披露
「近代日本医学の父」と呼ばれ、7月から発行される新千円札の肖像画にも起用された細菌学者、北里柴三郎の生涯を描く日本語オペラ「ドンネルの夢」(歴史オペラ制作委員会主催)が6月15、16日、北里大学病院がある相模原市で初演される。新型コロナウイルス禍で政府への助言役を務めた尾身茂氏も、合唱団の一員として演技も披露する予定という。 ドンネルはドイツ語で「雷」を意味し、厳格な態度で研究に打ち込んだ姿から「雷おやじ」と呼ばれた北里のあだ名でもあった。 オペラは3幕で構成。コレラの大流行で弟や妹を失い医学を志した子供時代から、ドイツ留学で破傷風菌の純粋培養に成功して帰国、慶応義塾大を創設した福沢諭吉の支援で研究所を設立するも東京大の研究者らとの確執をへて所長を辞任するまでを、2時間半程度で描く。 脚本と北里の母親、貞役を務めるソプラノ歌手の新南田(しなだ)ゆりさんは「どんなことがあってもあきらめず、医学の世界で大きな貢献をした北里の姿から何かを感じ取ってほしい」と話す。 4月下旬に東京都調布市で行われた稽古には、主演を務める北里役のテノール歌手、土崎譲さん(46)をはじめ、多くの関係者が参加。ピアノの伴奏に合わせながら、場面ごとに歌や体の動きを確認するなどしていた。土崎さんは「終始一貫、こだわりと信念を持った北里の生き方を伝えたい」と意気込む。 合唱団には、コロナ禍で政府の分科会長を務めた公益財団法人「結核予防会」の理事長である尾身氏も参加。北里が前身の「日本結核予防協会」を創設した縁などから加わり練習にも顔を出す。 現1万円札の肖像画である福沢との縁が深い北里は、慶応大医学部では初代学部長を務めた。そこで慶応義塾も役作りなどで協力。慶応義塾福沢研究センター(東京都港区)の都倉武之准教授(44)は「北里の生涯をオペラで描くとは面白い試みだと思う。今後は新千円札の北里を通じ、福沢にも思いをはせてもらえれば」と話す。 初演のチケットは完売し、キャンセル待ちの状態だが、上演自体は今後も続けていくという。