「退職させてもらえない」会社は違法なのか?~退職代行を使う側と使われる側の話~(桐生由紀 社会保険労務士)
■退職願と退職届の違い
退職する場合に会社に提出する書類として「退職願」と「退職届」があります。退職を考えているものの、退職願と退職届の違いがわからないという方もいるでしょう。この2つは似ていますが、役割や意味がまったく異なります。 では、退職願と退職届にはどのような違いがあるのでしょうか。また、どのように使い分ければよいのでしょうか。 ●退職願 退職願は従業員が退職の意思を会社に伝えるために提出する書類です。退職願は従業員側からの労働契約の解約の申し込みです。「会社を辞めさせてほしい」という意思表示です。 そのため、退職願を提出しただけでは退職が決定したとはいえず、会社がそれを承諾することで退職(労働契約の解約)が成立します。 会社側は従業員に残ってほしい場合はすぐに承諾せずよく話し合ってください。反対に引き留める必要がなければ承諾の意思を伝えてください。 「会社が承諾してくれなければ退職できないのではないか」と不安に思う人もいるでしょう。会社が退職願を承諾してくれなかった場合も退職できないことはありません。前述したとおり、退職願を出してから2週間を経過すれば会社側の承諾がなくても労働契約を解約することができます。 ●退職届 退職届は、従業員側から退職を一方的に通告する書類です。「退職します」という意思表示をするものなので提出した時点で効力が生じ原則として取り消しもできません。 退職届を提出する際の注意点として、書面の題名が退職届と書かれていても、その内容が「退職いたしたくお願いします」というように「願い出る」内容になっていると、実態として退職願であると考えられてしまう場合があり注意が必要です。すぐ退職したい場合は「退職いたします」と明記しましょう。 また、退職日が書かれていないと「いつ退職するのか」が曖昧になってしまいます。退職日を明確にするためにも退職日は必ず記載しましょう。 退職願と退職届の使い分けは、状況によってケースバイケースです。2つの書面の違いを理解しトラブルのないよう退職手続きを進めるようにしましょう。