生き残り賭ける地方競馬 ファンサービスで明暗
全国の地方競馬場の経営難が指摘されて久しい中、ナイター競馬開催が生き残り策の一つになりつつあります。高知競馬場(高知市)では2009年に全国初の通年ナイターに踏み切り、売り上げが大幅増加。また兵庫県の園田競馬場(尼崎市)も昨年、関西初のナイター開催に踏み切り、売り上げアップを目指しています。一方、県議会などから存廃の 議論が出ている名古屋競馬場(名古屋市)は、地域住民の反対などが根強く、ナイター実現は遠のいており、別の抜本的な対策を模索している状況で、明暗が分かれています。 ナイター競馬は最終発走時間が午後8時半前後に設定されるレース開催のこと。地方競馬場は平日開催が多く、夕方から夜間にかけたレースを増やすことで会社帰りのサラリーマンらの 取り込みを見込めるほか、インターネット投票による売り上げ増加も期待できます。1986年に東京の大井競馬場(東京シティ競馬)で公営初開催され、売り上げ増加に一定の効果をあげました。現在は全国の6地方競馬場で行われています。 高知競馬場は連敗記録で話題となった「ハルウララ」効果はあったものの、長年厳しい経営が続いていました。そこで気候が温暖という強みを生かし、通年ナイターを導入。さらに昨年10月には日本中央競馬会(JRA)のシステム「IPAT」を使ったネット発売も始め、 1日平均売り上げは、2010年度6400万円、11年度7600万円と伸び、昨年の大みそかには約1億4300万円を達成。今年3月のグレード競走日には2億9200万円に達しています。 また兵庫県の園田、姫路競馬場を合わせた売り上げは1991年度をピークに低迷が続き、2010年度は約5億5000万円の赤字に転落。12年度も赤字の見通しです。
そこで兵庫県競馬組合が売り上げアップ対策として踏み切ったのが昨年秋の園田ナイター開催導入でした。1日の平均来場者は10年度に比べて4割増の5300人を見込んでいます。今年は4月からナイター開催をスタートしました。ただナイター開催は現在金曜日のみに限定されており、来場者数も目標の7割程度にとどまっており、成果はまだ未知数です。 またJRAとの関係で、「IPAT」 によるネット発売は金曜はできない上、JRA場外馬券場でのナイター発売も行っていません。園田競馬関係者は「家族連れなど、これまでとは違う客層は確かに増えているが、抜本的に売り上げを増やすのはJRA場外発売などを実現することが必要ではないか」と話しています。 一方、名古屋競馬の過去20年の経営状況をみると、発売額は年々減り、2011年度はピーク時の約4分の1の147億円。、累積赤字は40億円に上ります。知事や県議会からは存続の意義を問う声が出ており、愛知県などが設置した経営改革委員会が7月までにまとめる報告書を踏まえ、県と両市が方向性を決める見通しですが、今後も赤字傾向が続くならば廃止を迫る結論が出る可能性は高い状況です。 名古屋競馬も長年ナイター開催を模索していましたが、地域住民の反対が根強く、実現が困難な状況。また一定規模の土地の確保ができる弥富トレーニングセンター(同県弥富市)を活用する案も出ていましたが、「赤字体質になってから、さらに大規模な投資を行うことはどうなのか」という意見も出て、ナイター開催論議はしぼんでいるのが現状です。 愛知県議会の松山登県議(日本維新の会)は「名古屋競馬が自治体の財政に一定の寄与をしたことは確か」としながらも、「平日開催の多い地方競馬ファンは高齢化が進んでおり、ファンも減っている。もっと若者を取り込むような改善策を探さないと厳しい」と指摘。ナイター開催に代わる妙手を求めています。園田競馬ではナイターを盛り上げる専属アイドルを誕生させるなど新たな手も打ち出しましたが、「アイドルファンはアイドルを見に来ても馬券を買うかは別」(園田競馬関係者)という厳しい見方もあります。 今年3月には広島の福山市営競馬が廃止されましたが、競馬場廃止は、関係者の生活再建や再雇用問題、競馬場などの跡地利用といった課題が生まれます。現在ある15地方競馬場は南関東を除けば厳しい環境が続いています。今後ナイターのほかにも対策が打ち出せるか注目されます。