いずみシンフォニエッタ大阪が贈る、2025年最新の現代音楽世界地図「五大陸を巡るシン・音楽漫遊記」
近・現代音楽を主なレパートリーとしながらユニークな活動を続ける住友生命いずみホールのレジデント・オーケストラ、いずみシンフォニエッタ大阪。その第53回定期演奏会が2025年2月15日(土)に行われる。題して「五大陸を巡るシン・音楽漫遊記」。現代音楽の現在を世界5大陸の5人の作曲家を通して探ろうというプログラムだ。2023年9月に急逝した同オーケストラの音楽監督で日本を代表する作曲家、西村朗が最後に手掛けた企画でもある。 全ての写真はこちら 「意識したのは"万博year"です。世界の現状を踏まえながら音楽の多様性というか、世界が平等に存在することの意味を示したいというのが1つのテーマになりました」。そう語るのはプログラム・アドバイザーの川島素晴。こうして選ばれたのがマイケル・ブレイク(アフリカ)、ピエール・ブーレーズ(ヨーロッパ)、エイトル・ヴィラ=ロボス(南アメリカ)、カール・ヴァイン(オーストラリア)、室元拓人(アジア)の5人。主知的な方法論で音楽を発展させた北半球のブーレーズに対し、自国の民族性をのびやかに表現する南半球の3人という構図が面白い。こうした中、異彩を放つのが2022年度武満徹作曲賞第1位の室元拓人。日本の奇祭をコンセプトに作曲を行っているという室元の委嘱新作は、三重県尾鷲に伝わる「オコゼ笑い祭り」を題材にしたものになるという。 公演に先駆けて行われた記者会見には常任指揮者の飯森範親、カール・ヴァインのオーボエ協奏曲でソロを務める古部賢一が出席。古部はこの作品を「呪術的な第1部、天国的な美しさに溢れた第2部、そしてオセアニアのお祭りのような第3部という大きな物語を感じる作品」と紹介し、随所に現れるオーストラリアならではの魅力を強調。またヴィラ=ロボスの『7つの音のシランダ』でソロを務めるファゴットの東口泰之がメッセージを寄せ、"シランダ"がもともと子どもたちの“輪舞"として伝わるブラジルの民族音楽であることや、ドレミファソラシの7つの音を主題に書かれたこの作品の躍動感などについて語った。こうした言葉を受けて飯森範親は「現代音楽の最先端を行ったのは確かにブーレーズに代表されるフランス。とは言え改めて世界の音楽の発生地を眺めてみると、それぞれの地域が自分たちの音楽の"今"を主張するようなまた別の景色が見えてくる」とプログラムの核心に触れ、ワールドワイドに展開する本番へ興味を誘った。 取材・文:逢坂聖也