<東京都知事選>立候補者の1日ルポ ── 増田寛也候補(前編)
舛添要一前東京都知事の辞職を受けて始まった東京都知事選は31日、投開票日を迎えた。各候補者はここまで、東京各地に足を運んで聴衆に手を振り、マイクを握って熱弁をふるってきた。立候補者の一人、元総務相の増田寛也氏(64)は、岩手県知事を務めた行政経験のアピールなどを通じて、知名度の低さをカバーして終盤追い上げてきたもよう。増田氏のある1日を追った。
かつお節など海の香がただようなか、外国人観光客らが楽しげに記念撮影に興じる。そのかたわらを、市場の人々が忙しげに行き交う。7月28日木曜日朝の東京・築地市場。選挙戦もあと3日となったこの日、増田氏は、11月に豊洲への移転が予定されているこの市場の視察から活動を開始した。 視察を終えて、記者やスタッフに囲まれながら戻ってきた増田氏。ビデオカメラの液晶モニタをチェックしていると、周囲を囲む人々に溶け込んで目立たないように感じる。街頭宣伝車の上に立つと、増田氏は「築地の豊洲への移転が最終局面にあり、もう立ち止まれないことを実感した。豊洲を発展させる方策を皆さんとともに考えたい」と訴えた。
集まった聴衆は、あまり多くはない。演説する増田氏の前を、何台もの運搬用車両が通り過ぎていく。築地で働く彼らにとっては労働時間の真っ最中であり、増田氏の話を聞く余裕はなさそうだった。 増田氏が去ったあと、その場に残っていた築地場外市場商店街振興組合の鈴木章夫理事長(68)は、「移転はもう決まった話であり、その後をどうするかが問題だ。たとえば、従来の場内市場と場外市場が共存するための方策などの課題を考えないと。とにかく話を前に進めないと、もう日にちがない」と焦燥感をにじませていた。
2番目の街頭演説の予定地である武蔵大学正門前へ来たが、付近は閑散としている。大学の守衛室で聞くと、この日は期末試験のまっただなかだという。人が少ないのは、試験のある学生しか登校しないためだろうか。到着した増田氏は、テレビ局の個別インタビューを終えると、街頭演説は行わず次の場所へ移動した。こういうこともあるのか。いささか拍子抜けした。 次の街頭演説会場である光が丘IMA付近に到着。たびたび増田氏の応援に駆けつけているという公明党の竹谷とし子参議院議員に、増田氏に対する聴衆の反応を聞くと、「増田さんの誠実さと実行力は伝わってきています。あと一息だと思います」と語った。 街宣車の上で演説を始めた増田氏は、都政の安定化と課題の改善に自分は適しているとアピールしたほか、国で検討が進む給付型奨学金について、都が上乗せ支給を行うことで「貧困家庭の子供が安心して暮らせる社会をつくる」と訴えた。