「頭ポンポン」報道に強烈な違和感…グラビアアイドルが告発する「業界」の悪しき“セクハラ”体質
ハラスメントの概念があるかさえ疑わしい芸能界の実態
芸能界はこの手のセクハラには敏感だ。なにしろ華やかな美女が無数にいる世界、若いアイドルや女性タレントがテレビ番組やイベントに出演すると、やたら触りたがる人がいるからだ。 Aさんが証言する。 「芸能界は、昭和の感覚が残った70代の上司ひとりとかじゃないんです。もっとたくさんの人が日常的に触ってくるんです。テレビ番組だったら、男性の共演者が初対面なのに肩や手をさりげなく触ってきたり、お笑い芸人が移動中に手相を見るとか言って触って、その手が太ももに伸びてきたり。マネジャーが同行していても、相手が一般人じゃなく先輩タレントだと止めにくい状況になります。そこで許しちゃうとエスカレートするんですよ」 イベント出演などでも現場の主催者やスポンサーなどがその立場を利用し、肩を組んできたり、抱き寄せてきたりすることも珍しくないという。 「グラビアアイドルって女優さんとかよりも軽く見られることもあって、ひどいのになると水着に着替えるとき部屋に来て、ずっと出て行かないとかあります。『匂いを嗅がせて』と顔を胸に近づける40代ぐらいの主催者もいましたね」 これらを放置していたら、「とても身が持たない」と、Aさんの場合はハッキリと「やめてください!」、「嫌です」と相手に伝えるという。「後輩の若いタレントにも、そうするようにアドバイスしています」とAさん。 「頭ポンポン」については、年配の芸能人に何度もされた経験があるという。 「そういう人って最初から私の名前を呼び捨てで、いかにも親しい関係みたいに迫ってきますね。有名な俳優さんに、やめてくださいと言ったとき、“このぐらいセクハラでも何でもないぞ”って言われたこともあります」 こうした芸能界のあしきしきたりのようなハラスメントを自衛で回避してきたAさんだからこそ、ネット上の「頭ポンポン」推奨記事には強い違和感を覚えていたという。
セクハラを自衛するために必要な心得
セクハラという概念があるのかさえ疑わしい芸能界。Aさんは、そんな中で、しっかりと自分の意思を示し、嫌な思いを回避してきた。 とはいえ、頭ポンポンに限らず、性的ハラスメントにあたるのかが分かりづらい行為は数多くある。町長のセクハラの中には、「ポニーテールを揺らされた」というものや、妊娠した女性職員が「産休報告時に腹をさすられ、耳を当てられた」というものもあったといい、女性職員が即、「セクハラです」と声を上げにくい側面もあるだろう。 そうした点については、厚労省が明確に判断基準を示している。<一般的には意に反する身体的接触によって強い精神的苦痛を被る場合には、一回でも就業環境を害することとなり得ます>(https://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/danjokintou/dl/120120_05.pdf)。 Aさんのように、相手の行為を不快に感じれば、たとえ単発でも毅然(きぜん)とした態度で、意思表示する。被害側は改めて、そうしたスタンスを徹底することが、ひいては職場の無自覚加害者を減らすこと、不快な思いをする場面自体を減少することにもつながりそうだ。
弁護士JP編集部