杉咲花、『アンメット』で得た確かな手応え 若葉竜也には「どこまでも輝いてほしかった」
杉咲花、「どこまでも輝いてほしかった」若葉竜也への思い
ーーその中で軸となるのが、やはり杉咲さんと若葉さんですよね。今回4度目の共演となりますが、杉咲さんが若葉さんの出演を後押しされたという経緯もあり、すでに信頼関係が出来上がっているのもチームとして非常に大きいと思います。 杉咲:最初にお話をいただいたときは三瓶先生の役がまだ決まっていなかったんです。そんな中で米田さんから若葉さんの名前が挙がって。若葉さんがドラマ出演から遠ざかっていたことは認識していたので「そんなチャレンジができるんだろうか」と思ったのですが、もしもそれが叶ったらなにかすごい挑戦ができてしまうんじゃないかと思って。そうなったら最高だなって。気づいたら電話をかけてしまっていました(笑)。 ーーそれほど若葉さんに対して絶対的な信頼感があるということですよね。 杉咲:若葉さんは、人が疑わないようなことを疑う方で。見過ごしてしまうようなところにおかしさや幸福を感じているのだろうなということを、これまで近くで拝見してきて感じていたんです。その視点や嗅覚みたいなものをすごく信頼しているんですよね。流行だったり、みんなが面白いと思うものを避けて、逆に周りが「それはだめ」ということに逆らってきたような方だと思っていて。それが若葉さんの格好良さだと思いますし、そのスタンスでこの世界に居続けるなかで、自分たちには到底分からない苦しみを感じることもあったのだろうと想像もします。私は、そんな若葉さんだからこそ、挑戦したことのない民放連続ドラマにメインキャストとして出演して、どこまでも輝いてほしかったんですよね。ドラマの撮影は大変だけど、他の現場と違った味わいがあると思っていて。その感動を一緒に味わえたら最高だし、こんなにも心強い共演者はいないと思いました。 ーー杉咲さん自身は今回、座長として何か意識していることはありますか? 杉咲:正直、座長としてどっしり現場に立つ度量が自分にはまだまだ足りていないことを痛感しています。ですが作品や現場に対して愛情を込めている気持ちが日々の態度から滲んで、それが少しでも隣にいる人に染み渡っていったらいいな、なんて思っていて。ですが、米田プロデューサーとは一昨年初めてお会いしたときから何度も何度も打ち合わせを重ねてきて、言葉を尽くしてこの作品について掘り下げてきたので、既にもう他とは比べ物にならないくらいの繋がりを感じながら作品づくりができている手応えがあって。とても幸せなことですし、こんなことができる時代になってきていることに喜びを感じています。これまで当たり前とされてきたものを崩していこうと思っている人たちが集まっているからこそ、みんなが最後までやりがいを感じられる現場であってほしい。ですが私自身は人見知りなので、人とのコミュニケーションでとても緊張してしまったり、うまく伝えられなかったりするんです。そういうときに、若葉さんが穏やかにみんなを巻き込んでくださるので、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。 ーー今回の『アンメット』もそうですが、『市子』や『52ヘルツのクジラたち』など、近年は杉咲さんの作品に向き合う姿勢が強く感じられるような作品が続いている印象です。 杉咲:ここ数年、作品に携わることが、社会や世の中に対して自分自身がどんな眼差しを向けているかの表明でもあると思うようになってきました。もちろんたまたま時期が重なったタイミングというのもありますが、年々その意識が強まっている感覚があって。だからこそ、作品選びも慎重になってきています。ただ、どんな作品からも社会は透けて見えてくるものだと思っているので、自分自身が作品に関わることで、 自分という人間が変化できたり、更新されていくこと、人にもっと優しくできるようになることが大事だと思っていて。役と出会って、自分が味わったことのないような苦しみを感じている人のことを想像したり、自分とは違う誰かのことを理解しようとする時間を大切にしたいんです。 ーーいまの言葉からも、俳優という役割以上に作品を背負っているのがすごく伝わってきました。その姿勢は、いろいろな経験を積み重ねてきた中で生まれてきたものなんでしょうか? 杉咲:自分が選挙に行ける年齢になったことや、コロナ禍を経験したこともそうですが、やっぱり歳を重ねていろんな出来事を経験していく中で、疑問に思うことだったり、こうなったらいいのになと思うことが少しずつ増えてきたんです。そういう感覚が芽生え始めてきたときに、自分と近しい懸念を示す人が近くにいてくれることの心強さを感じましたし、俳優として物語をブラッシュアップしていけることに作品に関わるやりがいを感じるので、そういうことができる場所を探していきたいなと思うようになりました。 ーーそういう意味でも、『アンメット』は杉咲さんにとってものすごく大きな作品になりそうでうすね。 杉咲:そうですね。とにかくいまは、関わる人たちともっともっと心の奥底の方で交わり合いたいという気持ちがあります。人としても変わっていけるように。『アンメット』が終わったときにどういう景色が見られるのか、私自身も楽しみにしたいと思います。
宮川翔