“夢の中の妻”が殺人犯に…しかも彼女は実在して!?夢と現実が交差するWEB漫画に「鳥肌立ちました」「何回見ても感動」【作者に訊く】
毎日違う職業ながら、同じ女性が妻となる夢を見る高校生。大好きな妻と夢の中の人生を謳歌する彼だったが、ある日の夢で、血まみれでうずくまる妻の姿を目撃する……。 矢薙(@yanaginga)さんの創作漫画「夢中の彼女」は、夢の中の妻を救おうと、現実と夢それぞれで奔走する主人公を描いた作品だ。今年8月、矢薙さんが自身のX(旧:Twitter)上で作品を公開した際は、4.1万件超のいいねとともに、「最高の物語」「途中の展開で鳥肌立ちました」「何回見ても感動する」と読者からさまざまな反響が寄せられた。 【漫画】「夢中の彼女」を読む Amazon Kindle インディーズの無料電子書籍でも4000件以上の評価が寄せられ、登場人物の奮闘や予想を裏切るストーリーで人気を博す同作。ウォーカープラスでは作者の矢薙さんに、同作の制作背景を取材した。 ■夢の中の幸せな新婚生活が、ある日一転――。「妻」を救う高校生の奮闘 妻の「ユイ」とともに飲食店を営む男性「ソウジ」。絵に描いたような幸せな新婚生活だが、それもそのはず。その光景はソウジが見る夢の中の出来事だった。 現実の彼は男子高校生で、毎夜異なる職業に就いた自分の夢を見ていた。だがどんな職業であってもユイが彼の妻であることは変わらず、ソウジにとって夢の中の暮らしが一番の楽しみになっていた。 ある夜、いつものように見た夢でソウジは刑事となり、殺人事件の現場に向かっていた。被害者は刃物でめった刺しにされた女性で、現場には犯人と思しき人物がうずくまっていた。だが、ソウジは容疑者を見て驚愕する。その人物は、夢の中の妻であるユイだったのだ。 目が覚めて、今までと全然違う夢に困惑したソウジ。「あの夢には何か意味があるのか?」と考えながら一日を過ごし床に就くと、次の職業は弁護士で、被告人となったユイこと「二又結」の弁護を担当することになっていた。 それまでと違い、前日の夢から流れが繋がっているのではというソウジの考えを裏付けるように、面会した“結”は「なんで昨日からこんな夢ばかり見るようになったんだろ」と漏らす。その言葉に、結が架空の人物ではなく、ソウジと同じく実在する人間の夢の姿であることを直感したソウジ。 「オレが絶対にキミを助ける」と夢で約束したソウジは、現実の世界で「二股結」を探し出そうと動き出す――、というストーリー。 ■「作者でも予測がつかない話に」制作の舞台裏 現実と夢を行き来する主人公のソウジが、夢に隠された謎や、妻であるユイの正体に近づいていく展開や、2人の絆が心を打つ読切作品。同作は「ジャンプルーキー!」2020年9月期ブロンズルーキー賞を受賞した作品で、現在は後日譚を加えた上で電子書籍として公開されている。そんな作品のアイデアや制作上のポイントについて、矢薙さんに話を訊いた。 ――「夢中の彼女」制作のきっかけについて教えてください。 「それまで描いていた4ページ漫画で担当編集はついたのですが、賞はもらえなかったので、受賞に特化した作品を作ろうと思いました。自分としては初となる50ページ超えの読切になり、結果的に賞もいただけたので思い出深い作品です」 ――「夢でさまざまな職業にかかわりながら、同じ妻と暮らす主人公」という設定がユニークです。アイデアの発端はどんなところにあったのでしょうか? 「本来の意味とは異なるのですが、『睡眠学習』という単語から着想を得ました。“寝るたびに職業訓練が行える”というアイデアは使えそうだなと思ったので」 ――夢の中の妻であるユイが現実世界にも繋がっていくストーリー展開も惹き込まれます。どんな流れで物語を作り出していきましたか? 「元々は無実のヒロインを助けるために夢で調査をする刑事のような話を考えていたのですが、最終的には夢だと思っていたものが現実の延長線上にあったと知る男女2人のボーイミーツガールもので、立ち向かう困難も2人の学生というところから決まっていきました。ヒロインの母親が惨殺されるシーンは刑事案の名残です」 ――本作の中で特に気に入っているポイントを教えてください。 「面会室のガラス越しに宣言する主人公のシーンが気に入っています。夢が現実なのを確信してからはノンストップでラストまで駆け抜けるのを意識しました。また読切の際はページ数の都合上カットされていた後日譚を、ページ制限のない電子書籍化の際に追加できて満足しています」 ――また、公募作品として工夫したポイントや、これまでの作品と違ったアプローチを取り入れた部分はありましたか? 「4ページ漫画で主に活動していたので、それまでの10倍以上の分量だからこそできることを目指しました。前述の4ページ漫画で培った『短いページ数でインパクトを出す』方法を何度も繰り返して極力飽きさせないように意識しました。また最初から決めていた展開も執筆中に二転三転していったので、作者でも予測がつかない話になったのが良かったのかなとも思いました」 取材協力:矢薙(@yanaginga)