日本では20年で価格が約5倍に!「有事の金」が世界で高騰する理由【いま金に何が起きているのか】
各国の中央銀行も買い増し
有事の際に金を買うのは投資家だけではない。他にも見逃せない要因があると加藤さんは指摘する。 「実は、2010年頃から各国の中央銀行が金を買い増しているのです。特に2022年は過去最大となり、2023年も2022年と同水準になりました。金の年間生産量のおよそ3分の1を各国の中央銀行が買っている計算です」 国の中央銀行、いわば国家が安全資産である金を買い増しているのだ。また、金の採掘コストが上昇していることも価格に影響している。現状、金の生産コストは1トロイオンス(ドル建ての基本単位、約31g)あたり約1350ドルと想定され、これが金価格の下値を支えている。採掘コストが増していけば、いずれ価格に転嫁される可能性は捨てきれない。 さらに、スマートフォンや電気自動車など、産業用途での金の需要も、今後増加することはあっても衰えることはないという。 「ウクライナ危機が長期化する中、中東地域では新たな紛争が勃発し、世界的な政情不安はいっそう高まっています。日本にとっては、東アジア情勢も憂慮されます。各国のインフレ傾向も収束の兆しはなく、懸念材料は重層化しています」 国内の金価格は20年前に比べて、5倍以上になった。この事実を、私たちはどう受け止めるべきか。 加藤英一郎さん。 1967年生まれ。田中貴金属工業貴金属リテール部長。金融市場やマクロ経済の動向を踏まえた、わかりやすい金相場の解説を様々なメディアで発信。 ※この記事は『サライ』本誌2024年6月号より転載しました。
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