虐待死か突然死か? 「21人の専門医」が証言台に立った異例の裁判 今西事件の2審が結審 判決言い渡しは11月
2021年3月、大阪地裁(渡部市郎裁判長)は、「脳の損傷は脳幹を含む広範囲のものであり、相当強い外力がないと生じない」と認定。交通事故並みの強い外力があったとする検察の主張についても「交通事故といっても態様はさまざまであり、人の手によって加えることができないものとはいえない」として、傷害致死罪が成立すると判断。強制わいせつ致傷罪の成立も認め(骨折についての傷害罪は無罪)、懲役12年を言い渡しました。弁護側と検察側がいずれも控訴しました。 二審は2023年5月、大阪高裁(石川恭司裁判長)で始まりました。一審では13人の医師への証人尋問が行われましたが、二審でも新たに8人の医師が証言台に立つ異例の展開となりました。
2023年10月の公判では、一審判決で「強い外力」がある根拠とされた頭部CT画像の解釈を巡って、放射線科医2人の証人尋問が行われました。11月には、頭蓋内の出血が生じた時期が心肺停止前かそれとも後かについて、2人の医師(検察側は法医学者、弁護側は小児科医)の証人尋問が行われました。 そして5月21日に開かれた公判で、弁護側は「二審での検察側医師は『所見はないが隠れている』、『病理所見で時期不明の出血が確認できる』と話すだけだった。脳幹損傷を起こすような”強い外力”を示す所見は全くない。一審は、硬膜下血腫があれば外力があるという予断が生んだ誤判だ」などと主張して、あらためていずれの罪も無罪だと主張しました。 一方、検察側は「解剖時の脳の写真は一部であり、脳幹損傷の所見はないとは断定できないはず。3つの罪は一連の事案で、今西被告と希愛ちゃんが2人きりとなった短い時間で起きていることなどを総合的に評価すれば、暴行があったと認定できる」などとして、3つの罪について有罪だと主張しました。 二審での公判は6回にわたって開かれ、いずれの回も大阪高裁の大法廷はほぼ満席。判決への注目が高まっています。
今西被告は、再逮捕後は一度も保釈が認められず、大阪拘置所で5年半近く勾留が続いています。弁護側の弁論の最後、主任弁護人の川﨑拓也弁護士は「二審での3年半、今西さんは拘置所にただ一人…彼の人生は歩みを止めている」と声を詰まらせ、それを聞いていた今西被告が涙をぬぐう場面もありました。 二審の判決は11月28日に言い渡される予定です。