鴻池運輸、越コールドチェーン拡大。南部から北部へ。幹線軸に域内展開
鴻池運輸は、ベトナム国内物流の強化に力を入れる。内需の成長を視野にホーチミンを中心とする南部に加え、ハノイなどの北部でコールドチェーン(低温物流)事業の拡大を図る。そのために南北間の幹線輸送機能を軸に主要都市での拠点新設を検討し、各都市部の域内物流網の構築を目指す。幹線輸送と域内物流により、全土をシームレスにつなぐコールドチェーンのプラットフォーム確立を2030年までの長期構想として掲げる。 中心となるのは現地物流大手ビナトランスなどとの合弁会社で総合物流を手掛ける現地法人コウノイケ・ビナトランス・ロジスティクス(鴻池ビナ)。グループの2030年ビジョンの下「在りたい姿」を描き、歩を進める。 同社は14年にKONOIKEグループが全株式を取得した冷凍冷蔵倉庫会社アンファ―AGの倉庫と合わせて、ホーチミン市内と近郊に計約1万1000平方メートルの冷凍冷蔵倉庫を保有している。一般倉庫も併用し日系・外資系小売業のDC(在庫型物流センター)業務を手掛け、流通加工やホーチミン市内への店舗配送も提供。現地のレストラン・ホテルへの食材配送なども行っている。 今後は同様のモデルを北部に展開する考え。現状、地域別では南部が同社の売り上げの7―8割を占めるが、売り上げ全体を拡大しながら北部も南部と同規模に伸ばしていく方針。南部についても、カントーなど多くの人口を持つ都市にコールドチェーンを広げたいという。 ベトナムの消費市場は南部を中心に成長してきたが、北部の発展と小売りチェーンなどの出店加速が予想される。鴻池ビナはこうした動きを視野に、他社に先行してネットワークの構築に動く。川瀬康一代表は「北部ではコールドチェーンが確立されておらず、お客さまの事業拡大のボトルネックになっている側面もある」とも説明する。 南北間輸送については現在3温度帯(冷凍・冷蔵・常温)対応の定期混載便をホーチミンからハノイ、南部フーコック島、カントー向けに週2―3便運行。中部高原のダラット発でもホーチミン向けを毎日運行している。 現状の業務は幹線の輸送部分にとどまるが、今後はまずはハノイ、中部の大都市ダナン、次のステップでハイフォン、カントーなどに冷凍冷蔵機能を持つ拠点新設を検討。各地でDC運営や域内配送の展開を目指す。 中部・北部に拠点を設置することで、食品メーカーや生産者の北部から南部への輸送需要も開拓する。 コールドチェーン事業では日系・外資系企業に加え、ベトナム企業への営業に注力しスケールメリットを出していく考えだ。トラックの塗装のデザイン統一、展示会への出展強化などブランディングにも取り組んでいる。 デジタル化・業務の自動化も進め、管理部門、現場ともに1人当たりの生産性向上を図る。コストを抑えて競争力を向上していく。 ■鉄鋼から生鮮まで多様なサービス 鴻池運輸は日系物流企業として初めてベトナムに進出し、今年で進出30周年を迎える。鴻池ビナは1996年に設立。同年にはベトナム航空との合弁で航空フォワーディングを手掛けるビナコ・フォワーディングも設立した。 アンファ―AG、BEL International Logistics Vietnamを含めた4社で設備輸送や据え付けからフォワーディング、通関、保税・一般・冷凍冷蔵倉庫、国内の輸配送まで多様なサービスを提供し、化学品や鉄鋼関連から精密部品、生鮮食品までさまざまな貨物を取り扱う。工場構内や倉庫内の作業請負も行っている。 鴻池ビナの拠点数は21拠点。運営倉庫面積は約3万平方メートル、自社車両は約100台。従業員数約650人の規模となっている。特にこの10年ほどはコールドチェーンを強みに国内物流を大きな柱の一つとして業容を拡大してきた。現在、国内物流の売上構成比は5割だが、将来的には7割程度まで高める方針。 川瀬代表は「ベトナム企業を含めても、南北間で混載便を定期運行している企業は限られる。これを背骨として事業を拡大していきたい」と意欲を示す。中国、インドシナ域内のクロスボーダートラック・サービスとの連携も視野に入れていく。
日本海事新聞社