「りくりゅう」三浦璃来・木原龍一「ああ、戻ってきたんだな」 急仕上げの復帰戦で見えた世界選手権連覇への光明
【ジャンプミスにレベルとりこぼしが課題】 「ああ、戻ってきたんだな」。スタートポジションに立った時にそう感じたと三浦が話すSP。3回転トーループで三浦のジャンプが2回転になってしまい、スロー3回転ルッツでも着氷を乱すミスは出たもののスピードのある滑りで、後半は試合に戻ってきた喜びに笑みもこぼれた。結果は、目標をクリアする65.61点の2位発進だった。 2日後のフリーでもミスが出る演技になった。最初のトリプルツイストはSPより上げてレベル3にしたが、次の3回転トーループからの3連続ジャンプは、三浦の最初のジャンプが2回転になり、次のダブルアクセルもシングルになった。そのあとの3回転サルコウは木原が4分の1の回転不足で右手をつく着氷だった。 SPでミスをしたスロー3回転ルッツはきれいに決めて流れに乗ったように見えたが、終盤のスロー3回転ループは転倒。だが演技自体は滑らかでスピード感があり、息も合った演技だった。それでも合計8.03点及ばず、オータムクラシックでも敗れたデュデク/デシャン組が優勝を決めた。 演技後の会見で木原は「本当にフリーがきつかった。練習でもあまりにもきつかったので、コーチから冗談で『きつかったらペアスピンのところで休憩していいよ』と言われたりして。試合の途中で止まろうかと思いました」と話し、笑わせた。 今回の試合は、ふたりにとって現状の自分たちの演技をジャッジがどう判断するかを確かめる意味もあった。だからこそ、合計200点に届かない2位の結果でも、穏やかな表情を保てていた。
【世界選手権連覇の条件】 3月の世界選手権へ向け、三浦は「レベルのとりこぼしが本当に多かったので、そこを見直して、世界選手権に向けていい練習を積み重ねていけたらなと思います」と話した。 事実、今回はジャンプのミスが目立ったが、各要素のレベルもとりこぼしていた。合計で自己最高の224.16点を出した昨季の世界国別対抗戦と比較すれば、SPでレベル3だったトリプルツイストが2になっただけでなく、他のすべての要素がレベル4だったのが、コンビネーションスピンとデススパイラルは今回レベル3。フリーでも、レベル4だった3種類のリフトとペアコンビネーションスピンは3で、3だったデススパイラルは2ととりこぼした。それらを確認できたことは次の試合に向けては大きい。 ミスをしたジャンプについては、これからじっくりと通し練習を繰り返していけば自信を持って跳べる武器にできる。さらに、レベルのとりこぼしをしっかり解消していけば、昨シーズンに近い得点は獲得できるようになるだろう。 そのうえで、次の世界選手権を考えれば、昨季2位だったアレクサ・クニエリム/ブランドン・フレイジャー組(アメリカ)が今季は出場しないなか、ライバルになるのは、デュデク/デシャン組だろう。彼らは今季、GPシリーズ・スケートカナダで214.64点の自己ベストを出しているが、GPファイナルはミスがあり204.30点、今回の四大陸選手権は198点台と波がある。 また、GPファイナル優勝のミネルバ・ファビアン・ハーゼ/ニキータ・ヴォロディン組(ドイツ)は自己最高が206.43点で、2位のサラ・コンティ/ニッコロ・マチー組(イタリア)は昨季の世界選手権3位だが、その時の208.08点が最高だ。 三浦と木原は本格的な練習に取り組める状態になっただけに、ここからしっかり調整していけば210点台は確実に出せるようになるはずだ。そうすれば、世界選手権では連覇を狙った戦いも十分にできる。ふたりはその足がかりを四大陸選手権で確認した。
折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi