被爆者の「心」ここに 42年前、思いつづった横断幕 故小峰秀孝さんが浦上天主堂描く
今年のノーベル平和賞を受ける日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が、核兵器廃絶の訴えを世界に届けてきた「証し」が長崎で見つかった。42年前に米国で第2回国連軍縮特別総会に参加した被爆者たちが、思いをつづった横断幕。長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)が発案し、当時40代の被爆者、小峰秀孝さん(先月83歳で死去)が浦上天主堂を描き上げた。 「私が小峰さんに何か描いてって頼んだんです」。長崎被災協の横山照子副会長(83)は回顧する。戦後の差別や病に苦しんだ小峰さんが被爆者運動に本格的に携わり始めた時期。返ってきた布に丁寧に描かれた絵を見て、そのうまさに驚いたという。 小峰さんは1990年代に出版した自分史の表紙絵や挿絵も自ら描くなど、絵心があった。別の関係者によると、小峰さんが生前、横断幕に絵を描いたと証言した記録も残る。 横山さんは78年の第1回総会に被団協代表団の一員として渡米。現地でさまざまな団体が横断幕を掲げているのを見て、次は被爆者もアピールしたいと考えたという。第2回総会に長崎から参加する2人に横断幕を託したが「寄せ書きをするとは全然想像していなかった」と明かす。現地で自然発生的にメッセージを記したとみられる。 40年余りを経て掘り起こされた横断幕。絵や寄せ書きを見た横山さんは思う。「はるばる日本からアメリカへと核兵器廃絶を訴えた被爆者たちの『心』が、ここにある」