「やる気がない」「さぼっている」と誤解されてしまう、発達年齢が平均的な子の7~8割の「境界知能」とは
7人に1人いる「境界知能」とは?
みなさんは「境界知能」という言葉を聞いたことはありますか? 境界知能とは、知的障害ではないけれど、知能指数(I Q)が一般より低い70~84に位置する人のことをいいます。境界知能にあたる人は全体の約14%、35人クラスだと約5人いるとされています。平均よりIQが低いため日常生活で様々な困難が伴うけれど、知的障害ではないため必要な支援が受けられない。そのため社会に適応出来ず、生きづらさを抱える人がいるのだといいます。 大ベストセラーとなった『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮社)の著者である宮口幸治氏が、境界知能の子ども達の特徴と、対応策を書いた『マンガでわかる境界知能とグレーゾーンの子どもたち』(扶桑社)という本があります。この本は漫画で、教師の視点から、境界知能や何かしらの課題があるけれど、はっきりした原因や状態がわかりにくい“グレーゾーンの子どもたち”の事例が描かれています。 例えば、ちょっとしたことで機嫌を損ね、その後、全然機嫌が戻らない子。自信がなく、周りの言動を全てマイナスに捉え、自分が馬鹿にされていると感じてしまう子。しょっちゅう忘れ物をして、どれだけ注意しても改善されない子。空気を読んだり、人の気持ちを想像することが難しい子……。 こういった子どもたち、みなさんも子どもの頃、クラスにひとりはいたのではないでしょうか。こういった子どもたちが全員境界知能であったり、なんらかの障害を抱えているというわけではないと思います。ただ、何かしらの発達の問題を抱えている可能性があるのです。
不真面目、やる気がないと思われてしまう
境界知能の子は普通に話してもほとんど見分けがつかず、周囲から気付かれにくいのだそうです。しかし境界知能の子は、発達年齢が平均的な子の7~8割と言われており、2学年下の子が混ざって勉強しているようなもの。勉強についていけなくて当然なのですが、「やる気がない」「真面目にやっていないのではないか」「厄介な子」「さぼっている」と周囲から誤解されてしまうといいます。実際は、本人たちもどうしていいか分からず困っている可能性があり、やる気でどうにかなると責められたり怒られたりしても、問題の解決にはなりません。 境界知能や発達障害でなくても、人間というのは様々な特性を持っているものだと思うんです。筆者は境界知能や発達障害ではありませんが、子どもの頃から全く片づけられないという特性があります。片づけ方法が書かれた記事を読んでみたり、定期的に掃除する努力をしてみたりしたのですが、気が付くと手が付けられないくらい散らかってしまうんです。もう本当に自分ではどうにもできないレベル。色々調べていくうちに、同じような特性があり、真剣に悩んでいる人たちも少なくないことを知りました。 友達にいつも呆れられるのですが、「本当にどれだけ努力しても自分でも信じられないくらい片づけられないんだ」と言ってみたことがあります。すると、「そういう人もいるのは分かるけど、やっぱり“だらしなさ”もあるでしょ?」と言われたんです。一般的には「当たり前にできる」とされていることができないって、なかなか理解してもらえないんですよね。筆者の場合は片づけができないだけなので社会で生きていく上での支障はほとんどありませんが、それが例えば物を覚えることができない、簡単な計算ができないといったことであれば、仕事や日常生活に重大な支障が出るでしょう。 昨今、発達障害の存在が広く知られるようになり、有名人の中でも発達障害であることを公表する人も出てきました。発達障害が知られる前は、なんだか不思議な子、抜けている、困った人みたいに思われていた人たちが、実は障害を抱えていることがわかり、少しずつ仕方のないことなのだと理解されるようになってきました。境界知能も、「本人の努力や意思ではどうしようもないもの」という理解が必要なのだと思います。