災害復旧車両走行の“揺れ” 精密作業に影響 悩む職人 歴史300年の田鶴浜建具
被災地の復旧・復興に向けた作業が各地で進められる中、石川県七尾市では、災害復旧などにあたる車両の増加が思わぬところに影響を及ぼしています。 伝統産業の建て直しに向け奮闘する職人を悩ますのは「揺れ」です。 【写真を見る】災害復旧車両走行の“揺れ” 精密作業に影響 悩む職人 歴史300年の田鶴浜建具 300年以上の歴史を誇る伝統工芸「田鶴浜(たつるはま)建具」。 その産地として知られる七尾市の田鶴浜地区には、およそ15の事業者が軒を連ねます。 遠藤外数さんは、厚さ数ミリの薄い木材を、くぎを使わずに組み合わせる特徴の「組子細工」を手掛けています。職人の熟練の技が光ります。 元日の地震をきっかけに、こうした精密さが求められる作業にある影響が出ているといいます。 田鶴浜地区では、建具屋の多くが国道249号沿いに点在。 地震で地盤が沈下したりアスファルトがひび割れたりした道路に車が次々と通過し、その激しい振動が作業場を襲うのです。 「岡野建具工芸」は、そんな国道249号線に面しています。 職人の岡野隆さんは、度重なる振動により木材を加工する機械に影響が出ると話します。 岡野隆さん「トラックが通ると機械の刃が浮いて、木が欠けてしまう。使い物になりませんよ」 のと里山海道は、七尾市の横田インターとのと里山空港インターの間のおよそ33キロにわたり輪島方面への一方通行が続いていて、金沢方面へは国道などを迂回する必要があります。 このため、地震前よりも国道を行き交う車が増えているといいます。 のざき建具・野崎馨さん「震災後に見回ったときは全然何ともなかったけど(浄化槽が)今は壊れてしまった。地盤が震災で弱ったところに頻繁に車の往来があるから」 元日の地震で機械がなぎ倒されたり、建物に被害がみられる中、建具屋の多くは2月ごろから稼働を再開しました。 岡野さん「被災地で一生懸命やってくれとるのは分かるけど、私らも一生懸命やっているので、困るなという時もあるんですけどね。でもしょうがないなって思いながら」 思わぬ揺れの被害に複雑な心境を抱えつつも、伝統工芸の生業の再建へ手を止めることはありません。
北陸放送